硬軟織り交ぜた演技で、俳優として40年近く第一線で活躍を続ける中井貴一(57才)。新作主演映画『記憶にございません!』も公開前から話題だ。その中井について長年研究を続けるコラムニストのペリー荻野さんが、彼の魅力について綴る。
* * *
みなさん、こんにちは。「中井貴一研究所」所長のペリーです。
思えば私はこれまで「若林豪二枚目保存会」「生でんでんを観る会」(でんでん出演の舞台を見に行く)など、勝手な会を作って地下活動(なんで地下?)を続けてきましたが、時代劇以外で、一番長く続けているのが、中井貴一研究といえます。
なぜ、中井貴一が気になるのか? それは目の前に現れるたびに、違う貴一がそこにいるからです。古くは1982年、初時代劇『立花登青春手控え』で罪人を診察する若き医師、『ふぞろいの林檎たち』で大学生を演じて、悩み多き若者の代表のような存在感を示した貴一。
シリアス系の演技派…かと思ったら、ある日突然、CMでカッパとタヌキとともにお陽気に出てきた。あれれ?と思ったら、映画『マークスの山』では、連続殺人事件を追う刑事になってしましまの翳がさした暗い顔を見せる。その振れ幅のすごさに目が離せなくなったのです。
以来、出演作をチェックし続けた私は、この世には「A貴一」と「O貴一」が存在するのだと気づき、折に触れその違いについて書いてきました。
「A貴一」のAは、アクション。シリアスでタフな貴一です。柔術で悪人を投げ飛ばす立花登はじめ、真田広之と死闘を繰り広げた映画『亡国のイージス』、大河ドラマ『平清盛』で、海賊と戦うために海に飛び込み、弓矢をはねのけつつ、敵の船に飛び移って斬るわ、飛ぶわした清盛(松山ケンイチ)の育ての父・忠盛マッチョ貴一も忘れられません。