いよいよラグビーW杯日本大会の開幕が目前に迫った。出場20か国はまず9月20日からグループリーグ4試合を行い、上位2チームが進出するベスト8をかけて戦う。日本代表の最後の腕試しとして行われたのが、6日に行われた南アフリカとの一戦だ。
結果は7対41の完敗。とはいえ、守備の面では日本よりも大きくて力強い南アフリカ相手に当たり負けすることなく対抗でき、上位国と対等に戦えるレベルに達したと言えるのではないか。
主将のリーチ・マイケルは、試合後の会見で「この試合でティア1の圧力、強さは改めてわかった。準備としてはいい試合だった」と振り返った。後半途中から登場のスクラムハーフ流大(ながれ・ゆたか)も試合後のインタビューで「(いい攻撃もできたが)そこでトライまでいけないのがティア1というか、優勝を争う国との差だと思う」と課題を口にした。
これらのコメントで気になるのが「ティア1」という単語だ。「ティア(tier)」とは「区画、段、段階、層」を意味し、ラグビーにおいてはW杯で優勝を狙えるような強豪国と、それ以外の国とを分ける「階級」のようなニュアンスで使われることが多い。
ラグビー選手が口にしたり、関連記事などで頻繁に登場したりする「ティア」とはいったいどういう概念なのか。日本初のプロレフリーで国内トップレベルのゲームを数多く裁き、現在はプロコーチの肩書を持つ平林泰三氏(Libalent所属)はこう解説する。
「世界のラグビーを統括するワールドラグビー(前ラグビー国際評議会、IRB)が定めている区分です。欧州の6か国(イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリア)で争う『シックス・ネイションズ』と、南半球4か国(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)で争う『ザ・ラグビーチャンピオンシップ』は興行であるため、これら計10か国がプロラグビーの国と見なされ『ティア1』。それ以外の日本やフィジーなど13か国をデベロップメント(開発、振興)対象の国として『ティア2』と位置付けているのです」
成績によって順位が入れ替わる世界ランキングとは異なり、ティア間の移動は容易には行われない。国代表チーム同士の戦いであるテストマッチは、2017年までは同じティア内同士でしか基本的には対戦することができない不文律があった。