ラグビーW杯日本大会がいよいよ開幕する。2009年の開催決定から10年の時を経て、オリンピック、サッカーW杯に並ぶ「世界三大スポーツイベント」のひとつがこの日本で行われるのだ。
日本におけるラグビーは、もうひとつメジャーになりきれないスポーツという認識があり、その理由として「ルールの難しさ」がたびたび取り沙汰される。だが、最初はどんなスポーツだって難解に映るもの。ルールに潜む「基本的な考え方」を知れば、ゲーム観戦はぐっとおもしろくなるはずだ。
たとえば、ラグビーのレフリーには、他のスポーツにはあまり見られない特徴がある。レフリーにマイクが装着されており、音声が観客や視聴者に届けられるようになっているのだ。よく聞くと、「(ボールから)手、放して!」とか「まだ! 早い!」、時には「ありがとう!」とレフリーが言っているのが聞こえる。
審判が選手に「ありがとう」とはどういう意味なのか。国内外のトップレベルのゲームで数多く笛を吹いた経験のある平林泰三氏(Libalent所属プロコーチ)が解説する。
「ラグビーのレフリングでは、反則行為で相手チームが不利益を被ったかどうかが、プレーを続行させるかどうかのカギになります。そのため、展開中のプレーが相手の不利益にならないように、レフリーは事前に選手に言葉で促します。『このままいくと、笛を吹かないといけない』というときに、「やらないで!」と言い、それに応じてくれた選手に『ありがとう』というわけです」
アンパイア、ジャッジなど、他のスポーツで審判を意味する役割の人たちには、「選手のプレーを判定し、時には不正を見つけて罰を与える」のが仕事であるように見えるが、平林さんによると「ラグビーのレフリーには選手と共によいラグビーを創造する役割がある」というのだ。