台風15号が残した爪痕は大きかった。暴風雨により送電用の鉄塔や電柱がなぎ倒され、千葉県では一時、約60万軒の大規模停電が発生、3万戸以上で断水した。電気・水道が使えない世帯が多いなか、千葉県を酷暑が襲い、被災地では熱中症が多発。高齢者3人の死亡が確認された。
台風一過から1週間が経っても、なお約12万5000軒で停電が続き、完全復旧にはさらに2週間程度かかるという(9月15日現在)。
千葉県大網白里市の自宅で被災したノンフィクション作家の柳原三佳氏は、停電のなかでの約50時間の体験をこう語る。
「地震や台風などに対する備えは十分にしていたつもりでしたが、予想していなかったのは“暑さ”でした。日中の気温は35℃を超え、体を冷やしたいのに、冷たい水すら飲めませんでした。
私は84歳の母と2匹の犬と一緒に車の中に避難していましたが、結局、停電が起きていない浦安市の娘の家まで運転して移動しました。車がなければどうなっていたかと思います」
万全の備えをしたつもりでも、想定外の事態が起きれば、意外な“盲点”に気づかされる。台風・豪雨の被災経験者が、「準備しておいて良かった」「足りなくて困った」と感じたものは何か。
◆「蛍光テープ」で暗闇でも転倒防止