福島氏が口にした「再教育施設」(正式には「職業技能教育研修センター」)こそ、「現代のラーゲリ(収容所)」として欧米から批判される悪名高き施設である。
「再教育施設は、過激派宗教に染まった人々の社会復帰を支援するとの名目で、2014年以降に導入されました。2017年3月から8か月間、再教育施設に入れられたカザフスタン人のオムル・べカリ氏は、『施設内では早朝から深夜までウイグル人を“中国人化”する再教育が行われる。収容者は鎖につながれ、革命歌を歌わされて『党に感謝、国家に感謝、習近平主席に感謝』と大声で言わされる』と“洗脳”の実態を証言しました」(福島氏)
2018年9月、国連人種差別撤廃委員会は「最大100万人のウイグル人が再教育施設に入れられている」と報告した。
なぜ、中国当局はウイグル人をそこまで敵視するのか。もともと新疆地域は独立運動が盛んで暴動も頻発していたが、中国政府による徹底的な締め付けが始まったのは、2013年に習近平が国家主席に就任してからだという。
「ウイグル弾圧の大きなきっかけは、2014年4月に習近平が新疆ウイグル自治区を視察中に起きた“爆破テロ事件”です。いまだに謎の多い事件ですが、自分の命が狙われたと怖れおののいた習近平は保身のため『イスラム教の中国化』を掲げて、チベットを徹底的に弾圧して名を馳せた陳全国を新疆ウイグル自治区の書記に任命しました。
“泣く子も黙る”と怖れられる陳全国は、ムスリムの習慣にのっとった結婚や葬儀を行うことや、ベールを被ったり髭を蓄えることなどを禁止しました。さらに当局の言うことを聞かないウイグル人を一方的に拘束して、再教育施設送りにしたのです」(福島氏)
現在、日本では2000人前後のウイグル人やウイグル系日本人が暮らしている。人権が世界共通の価値観となっている現代、新疆ウイグル自治区で起きている出来事は日本にとっても決して他人事ではない。
「多くの在日ウイグル人は親族や知人が再教育施設に収容されたり、連絡が取れなくなったりしています。中には親族が10人以上収容されたり、ある日突然、『〇〇さんは再教育施設で急死しました』と連絡がきたりするケースもあります。
家族が収容所送りになっても当地では電話やメールが監視されるので詳しく事情を聞けないし、日本にいるウイグル人同士でも“この人は中国のスパイかもしれない”と疑心暗鬼になり、本音を言い合うことができません。日本にいても自由を謳歌できず、人知れず怯えているウイグル人がいることを多くの日本人には知ってもらいたい」(福島氏)