阪神・鳥谷敬(38)や中日・松坂大輔(39)など、一時代を築いたプロ野球選手たちが進退を迫られているが、少数精鋭の選手のなかでも、「引き際を自分で決められる選手」は一握りだ。
鳥谷については、谷本修・球団本部長が「タイガースのスターとして現役生活を終えてもらえないか」と事実上の“引退勧告”を通達。現役続行を希望する鳥谷は、ロッテ、中日など他球団への移籍も取り沙汰されている。阪神の元球団社長・野崎勝義氏はこう語る。
「鳥谷君を含むベテランは“まだやれる”と思っていますが、70人の登録枠や若手の育成など、球団の構想で押し出される選手はどうしても出てくる。プロの世界ですから、そうした側面は仕方ない。
もし鳥谷君が移籍して現役を続ければ、功労者でありながら球団とは少し距離ができてしまうでしょうね。本来なら引退試合を用意したうえでコーチ打診などをするのが筋ですが、他球団で現役を続ける選手にはそれができない。鳥谷君は功労者としての待遇にふさわしい選手なのですが……」
引退時やその後の処遇は“球団によって対応が異なる”という側面もある。阪神生え抜きとして初の2000本安打を達成し、鳥谷に抜かれるまで球団最多安打記録を保持していた名球会・藤田平氏は、「鳥谷の件は“お家騒動の阪神”らしい」と指摘する。
「僕も引退試合をやってもらっていないんですよ。現役を続けるつもりで秋季キャンプに参加したら、安藤統男・監督からいきなり『専任コーチになってほしい』と要請を受けた。もう全日程が終わっているので引退試合ができなかったんです。
当時は『阪神でユニフォームを脱いだ方がええやろな』と思って引退の道を選びましたが、今のようにFAやトライアウトの制度があったら、試してみたいと思ったやろうね。誰でも、それほど現役を続けたいもんなんです。
鳥谷も続けたいならやればいいし、阪神一筋で終えたければ辞めればいいと思う。ただ、コーチや監督をやってみたいなら、球団の言うことを聞いた選手のほうが引退後は幸せになっているんちゃうかな」