このように、動的質感については決して良好とは言えないものの、カワイイを超えた質感を持つキャストスタイルは、プレミアム軽としての資質は思ったより高いものに思えた。
そもそも軽自動車のユーザーの多くは今回のようなロングツーリングはあまりやらない。乗り味が良くないという弱点も、ショートトリップであれば気になることはないだろう。また「タント」のようなスーパーハイト系ワゴンに比べると室内は狭いものの、前後席のスペースにはかなりのゆとりがあるなど、実用性も高い。
にもかかわらず、キャストスタイルの販売は思わしくない。今年上半期の実績は月平均3500台。数値時代はそこまで悪くないように見えるが、プレミアムのスタイル、ホットハッチのスポーツ、クロスオーバーSUVのアクティバの3タイプを揃えながらこの実績では、ダイハツとしても到底満足のいかない数字だ。
じつは最初から販売が低調だったわけではない。新登場したときは価格が全般的に高めであったにもかかわらず、発売後1か月で2万台を受注するなど滑り出しは好調。2012年の発売後、徐々に販売を落とし始めていたライバルのN ONEを押さえたところまではダイハツの思惑通りに事が進んでいるように見えた。
ところがである。発売から1年が経過したあたりから、キャストの販売も大きく落ち始めた。N ONEが盛り返したからではない。どちらも売れなくなったのだ。
なぜプレミアム軽は失速してしまったのか──。もちろん普通の軽に比べて高価というのはネックだろう。だが、その違いは普通車における大衆車と高級車のように大きいわけではなく、微々たるもの。軽市場全体を見回すと、ホンダ「N BOX」やダイハツ「タント」など、もっと高価なスーパーハイトワゴンが売れに売れている。単なる価格の問題ではないのだ。