近年、軽自動車といえども100万円をゆうに超えるクルマが多数販売され、より上質感や快適性、ファッション性を高めた“プレミアム軽”が人気を博してきたが、ここにきて失速ぎみだ。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、ダイハツのプレミアム軽「キャスト」に試乗して、その要因に迫った。
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ダイハツの軽乗用車ラインアップのなかに「キャスト」というモデルがある。プレミアム軽を標榜するホンダ「N ONE」、実用性とスポーティーな走りを兼ね備えた軽ホットハッチのスズキ「アルトRS」、そして、街乗りの快適性を重視した軽クロスオーバーSUVのスズキ「ハスラー」と軽の人気車種すべてに対抗すべく、1つのモデルを3種類にカスタマイズするという面白いコンセプトによって生み出された。
そのうちN ONE対抗馬というミッションを負った「キャストスタイル」を700kmあまり走らせる機会があった。
テストドライブ車はノンターボのトップグレード「G プライムコレクション SAIII」。エクステリアはブリティシュな印象の濃いグリーンメタリックで、ルーフはホワイトのフイルムで2トーン化されていた。合成皮革シート、ウッド超の加飾パネル、紫外線&赤外線吸収ウインドウ、革巻きステアリング、LED室内照明、オートハイビーム付きLEDヘッドランプ等々、これが軽自動車かと思うような装備が満載だった。
そのキャストスタイルの印象だが、最大の特色は何と言っても、内外装のデザインの仕立てだ。
まずはエクステリア。パッと見はちょっとカワイイという程度の印象なのだが、じっくり観察すると作り込みは非凡だ。フロントフェイス、ボディ側面からテールに至るまで、随所に非常に細やかな面の絞りが施されていた。全幅1480mm以内という軽自動車の枠の中でこれだけ情感豊かな面を実現させたデザイナーやクレイモデラーの苦労がしのばれるところだった。
ドライブ中、最新のフランス車やBMWミニなど、デザインコンシャスなクルマと並べてみる機会が幾度もあった。ボディが軽サイズであるため、風景の中で単体で見るとそれほどインパクトはないのだが、それらのエモーショナル系モデルの横に置いても存在感を失わない。彼らが作ったとしてもおかしくないなと感じたほどだ。