身分や職業にかかわらず権利は守られるべきだが、実際には格差があるのが現実だ。著作権保護においても、そういった格差が生じつつある。ネット上の違法動画への遵法意識が高まる一方で、同じ動画でも保護されづらいジャンルが存在する。その結果生まれつつある危険と広がる治安の低下について、ライターの宮添優氏がレポートする。
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ネット上に、違法に複製された漫画などのコンテンツをアップロードしていたとして、違法サイト「漫画村」の管理人と見られる男らがフィリピン当局に身柄を確保され24日、やっと日本に移送された。これから福岡県警による取り調べが行われる予定だが、あまりに動きが鈍く「いくら海外当局が絡んでいるからといって遅すぎる」と、司法当局、マスコミ記者も苛立っている。
しかし一部を除けば、こうした違法コンテンツをアップロードしているサイトやSNS上の個人アカウントは、騒動のおかげで厳しい衆人環視のもとに置かれるようになった。「著作権」がどういう権利なのか、具体的には誰が損し誰が得をしているのか、ぼんやりではあるが一般市民も理解し始めたため、出版社や放送局、著作家達が権利を主張しやすい土壌が形成されつつあるのだろう。
一方で、漫画やテレビ映画などの映像、音楽作品だけが「コンテンツ」ではない。とある業界では、違法コンテンツの蔓延が手に負えないだけでなく、自身の著作権を声高に主張できない現実がある。それは、R18業界だ。
「然るべき許可を得て、出演者、製作陣にも正当な対価を払い、法に則って流通させ販売しています。それでも、今日発売した作品が、同時に違法サイトにアップロードされます。たとえば、とある有名女優の新作が出ても、DVDとして売れるのは数千本が限界で、ダウンロードされてもだいたいそれくらい。作品を見るほとんどの人、おそらく8割くらいは“違法サイト”を通じて見ているのです」
こう話すのは、都内の有名メーカー関係者。多い時で月に百数十本の“新作”をリリースしているが、直後に違法アップロードされるため、売り上げが落ちると嘆く。閲覧者の8割が違法サイト経由、ともなれば目の上のたんこぶどころではなく、資産をごっそり奪ってゆく“泥棒”そのもの、なはずだが「作品が作品だけに」(メーカー関係者)権利を声高に主張したところで、漫画や普通の映像作品のように、訴えを世間が聞き入れてくれるのか、不安が残るという。
実際に、こうしたメーカーの声を受けて、日本国内の弁護士らが対応に当たっている事例もあるが、とにかく違法アップロードサイトの数が多すぎるため追いつかない。また、首謀者を突き止めようとも大変な労力を要するために、結局のところ野放し状態になっているのが実情だ。都内の法律事務所関係者も肩を落とす。
「R18作品だからということで仕方ないのではないか、そう思われているメーカーさんだっているほどです。しかし正当な権利はやはり守られて然るべきなのは当然。そう思ってやっていますが、何せ数が多く、複数の反社勢力、海外マフィアなどが手を組み運営している場合もある。日本国内の司法当局に訴えるだけではダメで、国際的な捜査を要するのです。だから難しい」(法律事務所関係者)