風刺や教訓を含んだ言葉“ことわざ”には、猫の行動や仕草をもとに生まれた言葉も多いのをご存じだろうか? 今回はポピュラーなものからマイナーなものまで、知っているようで知らない、猫に関することわざの成り立ちや意味を紹介する。
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「ことわざは、昔話やわらべ歌などと同じ“口承文芸”のひとつで、文字ではなく、口頭で伝えられてきました」
と教えてくれたのは、ことわざ研究者の北村孝一さんだ。
「ことわざは、短い言葉で状況を巧みに捉えたり、多くの人が漠然と思っていることを的確に表現したりと、万人が“なるほど、うまいことを言うなぁ”と、共感が得られるように作られています。そして、世代を超えて使い続けられたものだけが残っているのです」(北村さん・以下同)
ことわざは海外にも多数あるが、日本語のことわざだけで、約3万語もある。このうち猫に関することわざは、240語以上にのぼる。犬や馬、サルなど、動物に関係することわざは多々あるが、その中でもこれはかなり多い方だという。
「これだけ数が多い理由は、昔から猫が庶民にとってなじみのある動物だったからといえます。ことわざが広がるには“共感”がポイントとなります。飼い主たちの共感を得てきたからこそ、語り継がれたと推測できます」
◆漢文やイソップ童話から誕生したことわざも!
猫に関することわざは、猫の行動や特徴をよく捉えたものが多い。例えば「猫に小判」は、小判の値打ちがわからない猫に小判を与えたところで関心を持たない、つまり、価値がわからない人にはなんの役にも立たないという意味。江戸時代後期に上方いろはかるたに採用されたことで一気に広まった。ほかにも、いくつか紹介してみよう。
■窮鼠猫を噛む
追い詰められて逃げ場がなくなったネズミは、天敵の猫にもかみつく。このことから、弱者も絶体絶命になったら反撃するという意味で使われる。
「これは、中国前漢時代の塩や鉄の専売制についての論議をまとめた『塩鉄論』の中に記された『窮鼠狸を噛む』がもととなっています。ここでは “狸”となっていますが、タヌキではなく、ヤマネコなど野生の猫を表しています」