大衆演劇の世界で、大人の女性たちを魅了してやまないのが、『宝海劇団』の座長・宝海大空(たかみおおぞら・24才)だ。舞台一筋、芸歴23年の“ストイック王子”の素顔に迫る。
◆1才から役者に…舞台は自分の一部!
大阪・堺市にある芝居小屋。扉を開けると、極彩色の舞台が広がっていた。平日の昼間にもかかわらず、100席以上ある観客席は、「座長~★」と黄色い声援を送る30~80代の女性たちで満席だ。その声援を受け、舞台上でひときわ輝いていたのが、1才から舞台に立ち、「舞台は私の一部です」と言い切る、宝海劇団座長・宝海大空だ。
「物心ついた時から舞台にあがっていました。それからずっと、役者一筋の人生です。常に舞台のことが頭にあり、月に1回の休みの日も、ほかの劇団の公演を観て学んでいます」(宝海大空・以下同)
宝海劇団が最も多く公演を行う大阪は大衆演劇が盛んな街。100近くの劇団が活動しているため、観客の審美眼も磨かれている。そんな環境下、1回3時間におよぶ公演中、観客の心と目を魅了し続けなければならない。並大抵の努力では人気を維持できない厳しい世界だ。
「私自身が公演を楽しんでいるので、それがお客さまにも伝わり、喜んでいただけているのではないでしょうか」
人気の理由をうかがうも、こう語り、謙虚な姿勢は崩れない。意識的に気をつけているのは体調管理と集中力の維持だという。
「食事は、質もそうですが量に気を使っています。満腹になると、集中力がそがれるので、公演中の食事量は、最低限にしていますね」
8時間におよぶ密着取材中、彼が楽屋で口にしたのは、水と小さなおまんじゅう1つだけだった。
彼は一座の座長でもあるため、周囲にも気を配らなければならない。白粉をはたいて化粧中も、10人ほどの劇団員が入れ替わり立ち替わりやってきて、衣装や演技、歌の打ち合わせをする。息をつく間もないが、楽屋の雰囲気は和やかで、若き座長を支えようという劇団員のやさしさもうかがえる。