日本が優勝候補のアイルランドを撃破し、列島を熱狂の渦に巻き込んでいるラグビーワールドカップ日本大会。第一週(9月20~26日)の観客数は42万人を超え、チケットは9月末現在で販売可能席の97%を売り上げた。
日本チームの予想以上の快進撃もあって大きく盛り上がる中、浮かない顔でいるのが都内在住で30年以上のラグビーファン歴を誇る40代のAさんだ。
「日本でワールドカップが見られるなんて夢のようで、奮発して最高級のチケットを購入したつもりでした。ところが会場で座席を確認して言葉を失いました……」(Aさん)
待ちに待ったワールドカップ。情熱的なプレーが見るものの心を打つアルゼンチン代表を愛するAさんは、9月21日に東京スタジアムで開催された注目の一戦・アルゼンチン対フランス戦の「プレミアムシート」を8万円で購入した。かなりの出費だったが憧れの選手たちの雄姿をまぶたに焼き付けるべく、「4年に一度ではない。一生に一度だ」と心の中で念仏のように繰り返し、チケットの先行販売に申し込んだのだった。
迎えた試合当日、夢見心地のAさんは両チームのファンでごった返す京王線に揺られ、普段は気恥ずかしくてできないハイタッチをボランティアと交わしてスタジアムに到着した。会場を満たす高揚感に期待はピークに達したが、自分の席を知って心持ちが一転した。
「“最高級”を謳うプレミアムシートだけに当然、メインスタンドの中央席が用意されていると思い込み、事前に座席を確認していなかったんです。ところがチケットに記載された席はバックスタンドの端のほうで、ゴールラインとゴールラインの間をほぼ4分の1と4分の3に分ける22mラインの延長線上でした。衝撃のあまり、思わず“え、ウソでしょ”と声に出してしまいました」(Aさん)
今大会のチケット料金はカテゴリーAからカテゴリーDまでの4段階。最も良い席のカテゴリーAは1万~4万円で、Aさんが観戦したアルゼンチン対フランス戦はカテゴリーAから順に3万円、2万2000円、1万4000円、7000円という価格設定だった。
それとは別にチケットに付加価値をつけた「公式ホスピタリティー商品」のひとつとして販売されたのが「プレミアムシート」だ。通常より高額なチケット代を払う代わりに「最上級カテゴリーの特別な席」でゲームを堪能できることが謳い文句で、予選プールのプレミアムシートの料金は5万5000円~15万3000円。最も高額な日本代表の試合は初戦のロシア戦が15万円、予選プール最終戦のスコットランド戦が15万3000円だった。