【著者に訊け】吉田修一氏/『アンジュと頭獅王』/1200円+税/小学館
童話「安寿と厨子王丸」や森鴎外『山椒大夫』の元にもなった中世成立の説経節「さんせう太夫」を、あの吉田修一が現代語訳したと聞き、訪れたのは西新宿「パークハイアット東京」の豪奢な高層階の一室。この天にも届く天空の城に一週間篭もって吉田氏は本書『アンジュと頭獅王』を書き、平安末期から令和へと、800年の時を軽々と超えてみせた。
「元々この作品は、今年創業25周年を迎えたパークハイアット東京に捧げる企画として始まりました。じつは20周年の時は、坂本龍一さんがホテルのコンセプト、TimelessにちなんだCDを製作されています。小説家として挑戦できる“時を超えて残るもの”は古典だなという発想から構築しました」
運命に弄ばれ、散り散りになった姉と弟の道行きが、作家の目には「恩に報い、人が人に分け与える物語」に映ったと言い、因果応報の理を説いた勧善懲悪譚が今、驚くべき進化を遂げる。