YouTuberといえば、固定カメラに向かって室内で「どーも! ●●です!」と叫びながら始まる動画に登場する人達というイメージが強い。そして、なぜか目にやかましいほど大きめの字幕(それはたいてい赤、白、黄色のゴシック体)をつけている。その独自文脈が苦手であまり熱心にYouTuberを見てこなかったイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、初めてハマったYouTuber「だいにぐるーぷ」について、何が他と違うのかについて考えた。
* * *
長年、通っていている床屋に女性スタッフが入った。専門学校を卒業したばかりの21歳、菅田将暉のファンだという。髪をタオルで拭かれつつ僕は「どんなテレビ観てるの?」と聞いた。彼女は「テレビですか……、ほぼ観ないですね。YouTuberばっかりですね」と答えた。同年代でテレビを観ている人は少ないですね、と続き「高校時代、はじめしゃちょーにハマってました!」と熱っぽく話す。
若者にとってYouTuberはテレビタレントと同等もしくはそれ以上の存在である。幼少期からテレビに浸かってきた33歳の僕にとって、にわかに信じがたい定説が証明された瞬間だった。
その出来事から数日後、いつものようにYouTubeを観ていた。その中で「だいにぐるーぷ」というYouTuberが目に留まる。
ルールがあるわけではないが、YouTuberのサムネのデザインはどれも似ている。動画に関連する写真(変顔のアップが主流)と太ゴシック体でデカデカと書かれるコピーで構成されたものが多い。しかし「だいにぐるーぷ」は違っていた。落ち着いたトーンの写真にさりげなく配置された企画タイトル名。YouTuberにしては自己主張が抑えめ、なおかつ洗練されたアイコンである。興味を惹かれたのでクリックし、動画を鑑賞してみた。
「この人達、スゴい……」
この日、僕は遂に出会ってしまった。心の底から「面白い」と思えるYouTuberに……。1日でほぼ全ての動画を鑑賞した後、友人各位に「だいにぐるーぷ」の動画URLをLINE。とどのつまり、布教したくなるほどハマってしまったのである。
「だいにぐるーぷ」は中学時代の同級生から構成される6人組だ。多くのYouTuberと異なり、ネット向けのハンドルネームは誰も使っていない。中学生活そのまま、お互いを名字で呼び合う。メンバーの半分が早慶生、もう半分が中卒といったグループ内における学歴格差も特徴的だ。
僕が彼らに対して、まず好感を抱いた部分は馴れ合いの少なさにある。「だいにぐるーぷ」の動画は内輪でウケているシーンが少ない。それこそYouTuberとはパーソナリティーを前面に出すことが仕事。動画の企画よりもYouTuber自身が主役となる。グループ系YouTuberとなれば、そんな個性に加え「仲間」といった要素も押し出される。メンバー間で盛り上がっていることが魅力の一つとなる。