近年、中国のアフリカ進出が目覚ましい。中国とアフリカ諸国の政治的・経済的な結びつきが強まる一方で、多額の援助やインフラ整備の見返りに利権を手にするやり方には「新植民地主義」との批判もある。実際の現地の様子はどうなのか。『もっとさいはての中国』著者の安田峰俊氏が、アフリカ・ケニアに開通した“中華鉄道”の乗車取材を敢行した。
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銀色の壁と人工的な造形は、横向きに倒したステレオを連想させる。その上に赤いアルファベットで「NAIROBI TERMINUS」(ナイロビ駅)と書かれている。
ここはナイロビ郊外にあるSGR(=Standard Gauge Railway。中国の融資で建設された)の始発駅である。ケニアの首都ナイロビから港湾都市のモンバサまでを結び、3年半の工事期間を経て2017年5月末に開通した。建設事業費はケニア独立後最高額の38億ドル(約4000億円)にのぼり、施工をおこなったのは中国国有ゼネコンの中国路橋(CRBC)だ。
セキュリティ・チェック用に設けられた白テント内へ進むと、蛍光色のベストを着たケニア人のセキュリティスタッフ数人が監視するなかで、中国国内の公共交通ではおなじみのX線手荷物検査機が稼働していた。マシンは中国企業の威視(NUCTECH)製だ。これは胡錦濤前国家主席の息子が創業者で、中国全土の150カ所近い空港すべてに検査機を納入するなど、権力と結びつく形で独占的にビジネスを展開している企業である。
ケニアはテロが多いためかSGRのセキュリティ・チェックは空港さながらだ。手荷物検査の後にはスタッフが片手持ちの金属探知機を使って全身をくまなくチェックしてくる。
「この金属を探すマシンも中国製かい?」
「そうだ。あれもこれも全部、あんたの国の製品だよ。中国はすごいな!」
セキュリティスタッフたちは私を中国人だと勘違いしたらしく、陽気に教えてくれた。
白テントを抜けるとようやく駅舎である。チケットオフィスのやけに天井が高いホールや、ガラス張りの向こうにいる駅職員に声をかけてチケットを買うシステムは、中国の鉄道駅とそっくりだ。なによりチケットの紙が中国国内の鉄道とほぼ同じである。