プロ野球の国鉄、巨人で活躍し、史上唯一の400勝投手である金田正一氏は、現役を退いてからも『週刊ポスト』で長く「誌上総監督」として数々の名物企画を世に送り出してきた。現役時代の実績だけでなく、その強烈なキャラクターと温かい人柄で多くのファンに愛された。ロッテ監督を退任後、約30年にわたって金田氏を取材してきた週刊ポスト記者が間近で見た、金田氏の魅力とは──。
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金田さんから最後に連絡があったのは今年7月末。「死ぬかと思ったよ」という心筋梗塞の手術を無事に終えた報告だった。
「ワシは心臓には自信があって、これまで一度も心臓で病院にかかったことがない。もちろん胸が痛いなどの予兆もなかった。体のケアには自信があったが、やはり86歳だからのぉ。もう少し運動をすればいいが、膝も痛い。今年の暑さも堪えた。(週刊)ポストの読者も高齢者が多いだろうから、記事で扱ってみたらどうだ」
そのアドバイスに従い、金田さんの体験談を交えた「真夏の心筋梗塞」という記事を掲載した(『週刊ポスト』8月30日号)。記事が出た頃、金田さんは腹痛を訴えて再び入院。その後はICUで治療を続けていたようで、金田さんから電話がかかってくることはなかった。
金田さんに向かって“金田さん”とか“カネさん”と呼ぶことはない。敬意を払って“監督”と呼ぶ。金田さんが電話をかけてくるときは「長嶋さんじゃ」とお決まりのネタから始まる。そして、世の中で起こった気になる出来事に対して“カネやん節”が炸裂する。
今年はその頻度が高かったが、常に野球界のことを気にかけていた。心筋梗塞のことを話していても、話はこんなふうに展開する。