北朝鮮の漁船が水産庁の船と衝突し、北朝鮮との関係性に再び緊張が高まっている。北朝鮮の船はこれまで幾度となく日本でトラブルを起こしてきたが、最大の事件として知られる北朝鮮の工作船追跡事件には、日本の暴力団の影があったという。暴力団取材に精通したジャーナリストの溝口敦氏と鈴木智彦氏が語り合った。
鈴木:ヤクザがらみの平成の大事件と言えば、2001年(平成13年)に起きた北朝鮮の工作船追跡事件が挙げられます。日本の排他的経済水域で北朝鮮の工作船が発見され、海上保安庁の巡視船と銃撃戦までした挙げ句、自爆して沈没した事件です。
沈没した北朝鮮工作船をサルベージして、工作員の携帯電話を回収し、データを復元して通話記録を調べたら、暴力団とつながりの深い在日韓国人との間で数十回も通話をしていたことがわかり、極東会(関東の指定暴力団)の幹部が逮捕された。
溝口:北朝鮮との間で覚せい剤の取引をしていたのではないかと疑われたと。工作船は逃走中に海に何かを投棄していて、それが覚せい剤だったのではないかと推測された。
鈴木:そうです。一審は無期懲役でしたが、2012年に出た二審で逆転無罪になり、検察が上告を諦めて無罪が確定した。
溝口:そうなんですか。
鈴木:当時、北朝鮮は覚せい剤を製造して、商売にしていた。「瀬取り」といって、海上で覚せい剤の受け渡しをする。昨年、韓国海軍が自衛隊機へレーダー照射したことが大問題になりましたが、「韓国軍艦船が自衛隊機を追い払おうとしたのは、瀬取りをしていた北朝鮮船を保護していたからではないか?」という疑いが出ていて、最近になって瀬取りはまた話題になっています。
船と船がくっついていると怪しまれるから、覚せい剤を完全防水に梱包して、ブイとGPSセンサーをつけて海に流し、それをあとから日本の漁船が取りに行くという受け渡し方法が大流行していました。