ラグビーワールドカップで快進撃を見せる日本代表チーム。桜のジャージを着た海外出身の選手たちが、日本を背負っている――。彼らはなぜ日本代表を選んだのか。日の丸の勝利のために戦うのか。ノンフィクションライターの山川徹氏が、彼らの想いと足跡を追った。
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「日本代表は私のライフのハイライトです。日本はめっちゃいい国。特に大阪が大好き。好きな町に暮らし、その国を代表して戦う。そこがラグビーのいいところですね」
激しいタックルで、日本のピンチを再三救った日本代表4番のトンプソンルーク(38才)は流暢な関西弁でそう話してくれた。
大きく曲がった鼻骨が、どんな相手にも、ひるまずにぶつかっていった証である。1981年生まれの38才。自らを「おじいちゃん」と呼ぶ。
ニュージーランドのクライストチャーチ北部にあるカイアポイ出身。牧場を営む父も、ラグビーの地域代表としてならした名選手だった。子供の頃から楕円球に親しんだトンプソンも、真っ黒なジャージをまとうニュージーランド代表――通称オールブラックスに憧れた。
しかし196cmの長身も、世界一のラグビー大国であるニュージーランドでは強みにはなりえない。
三洋電機(現パナソニックワイルドナイツ)に誘われて日本の土を踏んだのは、2004年のことである。
「ニュージーランドでは道路工事のアルバイトをしながらプレーしていました。でも日本では、プロのプレーヤーとして、フルタイムで大好きなラグビーができる。それが、ぼくにとって“ライフ イズ グッド”でした」
はじめは1、2年で帰国し、夢だったオールブラックスを目指そうと考えていた。だが、三洋電機で2年間の契約が切れたあと、大阪の花園ラグビー場をホームグラウンドにする近鉄ライナーズに声をかけられ、移籍を決意する。
日本に残ったのは「オンフィールドだけでなく、オフフィールドが面白かったから」と言う。オフフィールドとはラグビー以外の生活のことだ。