過去最大クラスの台風19号が日本列島に接近するなか、政府やメディアを通じて事前にできる対策や避難の心得が繰り返し報じられている。古今東西の災害の歴史にも詳しい歴史作家の島崎晋氏は、ちょうど60年前に甚大な被害をもたらした「伊勢湾台風」の被害との類似点を指摘する。
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この週末(12~13日)、再び巨大台風が上陸して、広範囲に大きな被害をもたらす恐れがある。先月、千葉県などを襲った台風15号を上回る恐れもあるというから警戒しなければならない。気象庁は「自分や大切な人の命を守るため、早めの対策を」と呼び掛けているが、上陸予想3日前に記者会見を開くのは異例なこと。それくらい今回の台風19号は特別ということである。
台風による被害といえば暴風、高潮、波浪、河川の氾濫、洪水、土砂崩れなどがある。台風19号の進路や暴風雨の予想などは気象庁の発表をはじめ信頼できるニュースで常に最新情報を確認し万全な備えをしていただきたいが、災害の歴史を振り返ると、今回の台風19号と伊勢湾台風には、いくつかの共通点があるのが気になる。発生時の中心気圧や中心部分の最大風速は若干及ばないまでも、それに近い数値を記録している。発生から短時間で急速に発達した点や、「スーパー台風」であること、進路、高潮被害が懸念されていることなどが似ている。
伊勢湾台風が日本列島を襲ったのは昭和34(1959)年9月26日から翌日にかけて。21日にマリアナ諸島沖で発生した台風15号が猛烈な勢いで発達し、非常に広い暴風域を伴いながらあまり衰えることなく北上。26日午後6時頃に和歌山県潮岬に上陸したのち、富山市の東から日本海に沿って北陸、東北地方を縦断して太平洋に抜け出た。
直撃を食らった紀伊半島沿岸一帯と伊勢湾沿岸では高潮と強風、河川の氾濫による被害が甚大で、愛知県南西部・渥美半島の伊良湖では最大瞬間風速が1秒間に55.3メートルを記録。愛知県だけで死者・行方不明者3300人以上に及ぶ大惨事となった。
全国の被害は、死者4697人、行方不明者401人、負傷者3万8921人、住家全壊4万838棟、半壊11万3052棟、床上浸水15万7858棟、床下浸水20万5753棟という甚大なものだった。気象庁によると、観測史上最大のこの台風は、九州から北海道までの全国で最大風速が1秒間に20メートル以上、最大瞬間風速が30メートル以上を記録したという。