2018年2月から50回にわたって続いた『週刊ポスト』のグラビア連載「寿影」。写真家・渡辺達生氏が、晩年にこれまでの人生を祝う意味を込め、葬儀で使用する「遺影」を「寿影」と置き換えて始まったプロジェクトだった。
『寿影』に登場した50人の中での最高齢は、大正、昭和、平成、令和と4つの元号を生き抜いてきた御年97歳の内海桂子師匠。今も現役を貫き、月6回、東京・浅草フランス座演芸場東洋館の舞台に立つ。80歳を過ぎてから大けがや大病に見舞われ、耳も遠くなり、足元もおぼつかないが、その生命力は衰え知らずだ。
「こんなに長生きするとは思ってなかったけど、未だに死ぬことも引退も考えたことなんてない。三味線を弾きながら、自分の漫談を続けているだけ。体が使えるうちは、とことん使いますよ。とにかく仕事をしているのが一番楽しい。死んでも舞台から下りるかってえの」と、“舞台で死ねたら本望”の芸人魂を貫く。
驚異的なバイタリティは、24歳年下の夫や、孫やひ孫世代の若い芸人に支えられている。
「若いの捕まえて、100年前の漫才を教えてやるって鍛えてるの。若い人と遊ぶのは元気が出ますよ」
夫に対しては、「歳も頭のレベルも違うのに、言いたいこと言い合えるのがいい。どうせ私が先に逝くだろうけど、遺言なんてありゃしない。私が死んだ後は“ご自由に!”ですよ。それまでは仲よく喧嘩しようね」と夫に目配せするが、その喧嘩こそが、元気の秘訣なのかもしれない。