すっかり目にすることが少なくなった紙の時刻表。スマホがあれば大丈夫と思いつつも、駅などで無料配布されている時刻表はちょくちょくもらって財布に入れている人も少なくないのではないか。その無料配布時刻表で、西日本鉄道はダイヤグラムを使用している。異色の時刻表は何のために作られ、どんな人が利用しているのか。ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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一時期、時刻表は月100万部を超える発行部数を誇っていた。時刻表を発売している出版社は多々あるが、そのなかでも鉄道ファンや業界内の間では、交通新聞社とJTBパブリッシングが発行・発売する時刻表が二大巨頭といわれる。
これらの時刻表は、ビジネスマンや旅行者の多いホテルや飲食店では必置とされていた。しかし、時代は変わった。紙の時刻表は、その役目をスマホアプリに取って代わられている。
時刻表のデジタル化は今に始まった話ではないが、スマホアプリが普及し、ヤフーなどから簡単に時刻を検索できるようになった。また、鉄道会社も独自に運行情報を配信。鉄道会社によっては、今、どこに、どんな電車が走っているのかをリアルタイムで教えてくれる。イノベーションは、紙の時刻表の存在感を薄めた。
とはいえ、紙の時刻表も座して死を待っているわけではない。
今年9月にはJTBパブリッシングが1964年10月号を再現した『時刻表 完全復刻版1964年10月号』を発売。1964年10月は東海道新幹線が開業した月でもあり、鉄道業界のみならず国内全土が大きく変貌していたことを実感していた時期でもある。復刻版の発売は記念品的な要素も濃いが、こうした芸当ができるのは紙ならではといえるだろう。
復刻版の発売は、少しでも紙の時刻表を復権させようという思いが込められているが、”どこでも、ネットで検索”という手軽さと便利さには太刀打ちできない。今後もネットやスマホアプリが攻勢を強めるのは自然な流れだ。
そんな紙の時刻表が逆風にさらされる中、九州・福岡県を地盤にしている西日本鉄道(西鉄)は通常の時刻表とは異なる不思議な時刻表を無料で配布している。
西鉄以外にも、駅で時刻表を無料配布する鉄道会社はある。それら鉄道会社が無料で配布する時刻表は、簡素なつくり・内容になっている。
一方、西鉄が無料配布している時刻表は、そうした無料配布の時刻表とは一線を画す。なぜなら、折りたたみ式の時刻表を開くと、そこには複雑なダイヤグラムが描かれているからだ。