10月14日、韓国の曹国(チョ・グク)法務部長官(法務大臣)
「とうとう若い世代が文在寅政権への“反抗”の狼煙をあげ始めたとみるべきです」
そう語るのは、元『週刊東洋経済』編集長で韓国経済に精通する勝又壽良氏。その指摘通り、現在の韓国では、若い世代を中心に文大統領の支持率が就任後最低を更新している。たとえば世論調査会社リアルメーターが9月19日に公表した30代の支持率は60.3%から48.5%に急落し、20代も48.7%から43.7%まで下がった。
若者が反文在寅にシフトした象徴的な出来事として勝又氏が注目するのは「ハンギョレ内紛」だ。
9月6日、韓国の進歩派メディアであるハンギョレ新聞で前代未聞の出来事が発生した。文大統領が法務部長官に任命したチョ氏を批判する記事が編集局長の指示で削除されたり、内容を書き換えさせられたことに反発した入社7年目以下の若手記者31名が、連名で編集局長の辞任を求める声明を出したのだ。
文大統領寄りの姿勢が目立ち「文政権の御用新聞」と目されていたハンギョレの若手記者らの決起は韓国ウォッチャーを驚かせた。
勝又氏が注視するのは、声明で若手記者らが韓国の「86世代」を「進歩既得権層」と称して痛烈に批判したことだ。
「86世代とは1960年代に生まれて、1980年代に学生運動で軍事政権と激しく渡り合った世代のこと。1997年の経済危機では入社間もなかったため解雇を免れ、その後の10年間で企業が採用を減らしたので社会的な昇進も早かったとされます。86世代は韓国で最も恵まれた世代であり、文政権の中枢を占めている。完全な左派であるハンギョレの若手が、文政権の要であり、その支持層でもある86世代をひっくるめて“既得権益を享受する階層”とみなして批判したことには、大きなインパクトがあります」(勝又氏)