日本は有数の長寿国だが、高齢になれば病に侵される確率も高くなる。2018年2月から50回にわたって続いた『週刊ポスト』のグラビア連載「寿影」に登場した著名人の中にも、病の発症で死と直面した人も少なくない。「寿影」とは、写真家・渡辺達生氏が、晩年にこれまでの人生を祝う意味を込め、葬儀で使用する「遺影」を「寿影」と置き換えて始まったプロジェクト。撮影ではカメラの前で、思い出の品とともに「理想の死に方」についても語ってもらっていた。
毒舌トークでお馴染みの毒蝮三太夫氏(83)は、70歳のとき腸閉塞と大腸がんを併発。夜中、耐えられない痛さで病院に行くと、その病院では、“手に負えない、手遅れだ”と言われ、別の病院に緊急搬送。7~8時間の大手術で、41日間入院した。
「俺、30センチくらい割腹したの。幸い転移はなく、今は以前にも増して元気だけど、健康診断を欠かさないなど、体のケアは大事だと悟ったね」
今は定期的に病院にも通い、医療費や人の世話にならない人生を歩むため、ジムで足腰を鍛えている。
「一度拾った命、格好いいジジイになろうと思っているよ。目指せ、日本のジョージ・クルーニーだな(笑い)」
死に方は自然な老衰を望む。
「いろんなところが傷んできて、苦しまずに電気が切れるようにポッと消えるのが理想。歳を考えれば確実に死は近づいているわけだから、明日ぽっくりでも不思議はないと思っているよ」
2年前、同じく大腸がんが発覚したシンガーの小坂忠氏(71)は、ステージ4の診断から除去手術を経て、奇跡的な復活を遂げた。
「がんは肺に転移して残っている。医者が言うには、僕がネガティブになるとがんが強くなると。だから負けられない。毎日が戦いなんだ。でもね、僕は病気になってよかったと思うことがある。それは人生の終わりを意識することができたこと。今後どう生きるか、じっくり考えるきっかけになったからね」
結論は、生涯シンガー。牧師である小坂氏はゴスペルシンガーとしても活動するが、歌で人々を励ますことを自身に課したのだ。
「僕の終活はリハビリを兼ねて、命の限り歌うこと。元気に歌う姿が、同じ病気の人たちの励みにもなっているようで、そんな人たちの希望になれたらうれしい」
今も精力的にライブ活動を行なうが、病気の体験を笑い交じりでトークするなどポジティブそのもの。そして、葬式に歌ってほしいという自作の曲も披露する。
「その日が来たら、みんなで歌って賑やかに送ってほしい」