先の台風は様々な爪痕を残した。避難所とホームレスの問題もそのひとつ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。
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台風19号の暴風雨が吹き荒れる10月12日、東京の台東区で自主避難所に避難をしてきたホームレスが門前払いされるという問題が発生した。問題の経緯を、ホームレス支援団体の社団法人あじいるがブログで公開。それをネットメディアが報じると、SNSを中心に拡散され、新聞社など大手マスコミも後追い報道をし、ネット界で大きな話題となった。
台東区は、自主避難所は区民を対象に開設したもので、同区に住所のないホームレスの人たちは受け入れることができなかったと説明した。だが、ネット上では「だったら、外国人旅行者の避難も受け入れないというのか」などと批判が殺到。新宿区に次いでホームレス人口の多い台東区なのになんたることかと、同区民である私もその無策ぶりに呆れた。
そして、15日、参議院予算委員会の総括質疑で国民民主党の森ゆうこ議員がこの件について、「人道的に被災者の権利という基本的人権を尊重し、人間らしく避難生活を送ることができる基準がある。どう考えているのか」と問い質し、安倍総理大臣がこう答えた。
「避難所は、災害発生後に被災者の生命身体などを保護するために、被災者が一時的に生活を送るために、設置されたものであり、各避難所では避難したすべての被災者を適切に受け入れることが望ましい。関係自治体に事実関係を確認し、適切に対応していく」(NHK NEWS WEBより)。
続いて、加藤勝信厚生労働相も閣議後記者会見で、「厚労省としては被害に遭われた方に関しては全ての方を取りこぼすことがないようにしっかり対応していく姿勢で取り組んでいきたい」と述べた(時事ドットコムより)。
それらお偉いさん方の発言を受けてのことだろう。同日、さっそくというかようやく、台東区長が動いた。区のHPで「この度の台風19号の際に、避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できなかった方がおられた事につきましては、大変申し訳ありませんでした」と謝罪した。また、「台東区では今回の事例を真摯に受け止め、庁内において検討組織を立ち上げました。関係機関等とも連携し、災害時に全ての方を援助する方策について検討し、対応を図ってまいります」とも付け加えた。
さて、台東区はこれから「災害時に全ての方を援助する」とのことだが、そのためにどのような具体的方策をとるのだろうか。検討結果をぜひ公開してもらいたいが、もしも、同様の災害が発生した場合に全ての人を自主避難所で受け入れる、というだけだったとしたら、この問題の根本的な解決方策とはいえない。
もちろん、相手がどんな人間であろうが、命が危ぶまれる状態から守るよう努めることは、行政の当然の仕事だ。ウーマンラッシュアワー・村本大輔の、〈ホームレスを区が受け入れないのは税金を払ってないからというツイートをみた。おれは高い税金を払ってる。それは税金を払えない人の分も負担させてもらってる。だから社会ってのは税金を払ってない人もいていい場所。税金は払える人が払えばいい。社会は誰であっても1人も見捨ててはいけない〉というツイートがハズっていたが、基本的な考え方はその通り。社会問題の解決役でもある行政は1人も見捨ててはいけない。
ただし、である。それは必ずしも、誰もが一律にまったく同じ行政サービスを受けられるようにする、ことと同義ではない。基本的人権を尊重するにしても、すべて完全平等にとはいかない場合もあるのである。