各国の代表や国内の代表を招き、国内外に新天皇誕生を披露する「即位の礼」が10月22日に挙行される。祝賀パレードは台風19号の被害を考慮し11月10日に延期されたが、祝宴である「饗宴の儀」は31日まで計4回、催される予定だ。歴史作家の島崎晋氏が、一連の儀式でもっとも重要な「即位礼正殿の儀」に用いられる「三種の神器」の歴史について解説する。
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来たる10月22~31日にかけて新天皇の「即位の礼」が行なわれる。一番重要なのは初日の昼過ぎに実施される「即位礼正殿の儀」で、総理官邸ホームページ掲載の「即位礼正殿の儀の次第概要」には、「天皇陛下が正殿松の間にお出まし」になるのに続き「侍従がそれぞれ剣、璽(じ)、国璽及び御璽を捧持」し、「天皇陛下が高御座(たかみくら)にお昇り」になるのに続いて「侍従が剣、璽、国璽及び御璽を高御座の案上に奉安」すると手順が記されている。
ここにある「剣、璽」はいわゆる「三種の神器」のなかの草薙剣(くさなぎのつるぎ)と八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)を指している。「三種」と言いながら二つしかないのは、残る八咫鏡(やたのかがみ)が宮中の賢所(かしこどころ)に安置され、移動が禁じられているからだ。賢所での儀礼は即位当日の5月1日、すでに行なわれている。
改めて、三種の神器について説明しよう。『日本書紀』には、八坂瓊曲玉と八咫鏡は「天石窟(あまのいわや)に籠もった天照大神を誘い出すために使用された神器」で、草薙剣は「素戔嗚尊(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したとき、その尾の中から得た剣」と記されている。一方、『古事記』には、天照大神が孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を地上へ降臨させる際に、これらを授けたと記されている。
その後、八坂瓊曲玉だけは天皇の側にあったが、八咫鏡は伊勢神宮の皇大神宮(内宮)の、草薙剣は熱田神宮の御神体とされ、それぞれの形代(かたしろ)と呼ばれるレプリカ(複製)が宮中に献上されたという。
記録に残る限り、即位礼に草薙剣と八咫鏡が用いられた最初の例は持統天皇が即位した690年になるが、実際はそれより前に遡るかもしれない。時期が特定できないにしても、これに八坂瓊曲玉を加えた三種の神器がそれほど重要なものであれば、形代と呼ぶのには違和感が残る。むしろ、皇位継承儀式のためにつくられたオリジナルと認識すべきであろう。