警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、昨今の防犯カメラによる捜査の実情をレポートする。
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「最近の若い刑事を、なんて呼ぶか知ってるかい?」
今年ももうすぐハロウィーン。昨年は渋谷で若者が軽トラックを横転させ、その上にのぼって裸で踊ったり、トラックを損壊させるという事件が起きていた。その時、使われた捜査手法である“リレー方式”について話を聞いていると、警視庁の元刑事がそう問いかけてきた。
リレー方式とは、現場の映像から容疑者の外見を特定し、周辺の防犯カメラや監視カメラなどの映像をつなぎ合わせ、容疑者の移動方向をたどり、居場所を突き止める手法である。渋谷の事件ではこの手法で4人が逮捕された。今年4月、お茶の水女子大付属中の秋篠宮家悠仁さまの机に刃物が置かれていた事件でも、このリレー方式が用いられ犯人がスピード逮捕されている。今や捜査に欠かせないのが、このリレー方式だ。
突然そう聞かれても、ピンとくるものがなかった。刑事のあだ名といえば、“マムシの○○”“すっぽんの××”“仏の△△”“落としの□□”などが相場だが、最近の若い刑事に当てはまりそうなものはない。刑事ドラマでは役柄に合わせてニックネームがつけられることもあるが、現場ではほとんど聞かない。
「わかりませんね」と首を傾げると、元刑事は鼻にシワを寄せ、皮肉たっぷりの声でこう言った。
「ビデオ刑事(デカ)って言うんだよ」
「俺たちの時代は事件が起きると、不信人物や車両などを見なかったか、変な音を聞かなかったなどを近所に聞いて回る地取り捜査が基本だった。今は目撃情報を聞いて回るより、まずは防犯カメラを探して回る」
容疑者につながる情報よりも、容疑者が映っているかもしれない防犯カメラを探して回ることから、彼らをビデオ刑事と呼んでいるという。
「ビデオ刑事は現場周辺に防犯カメラが見つからないと、聞き込みもせずに戻ってくるんだ。『情報を集めてこい!』とハッパをかけても、『映像がなければ証拠にもならないから、聞いて回っても無駄ですよ』と、尻を動かそうともしない。刑事の捜査能力はどんどん落ちるばかりだ」
映像と映像をつなげるために聞き込みを行っている感じすらあると元刑事は嘆くが、その一方で防犯カメラなしに現在の捜査は成り立たないのも事実だ。
全国ではおそよ300万台以上の防犯カメラが稼働しているといわれているが、2018年3月時点で、警察が犯罪が多い地域を中心に設置し管理している街頭防犯カメラは29都道府県1820台。以外と少ないのだが、これでも10年前と比べると5倍に増えている。そのきっかけとなったのは2002年2月、新宿区歌舞伎町周辺に取り付けられた50台の防犯カメラだといわれている。
当時、歌舞伎町では暴力団と中国人マフィアが勢力争いを繰り広げていた。そしてこの年の9月、住吉会系の組員2人が中国人マフィアに射殺されるという“パリジェン発砲事件”が起きる。場所は歌舞伎町の風林会館の1階にある「純喫茶パリジェンヌ」。店は今も同じ場所にあるが、ひとまわり小さくなり内装も様変わりしている。