スコットランド戦で突進するリーチマイケルを支える中村(右端/時事通信フォト)

スコットランド戦で突進するリーチマイケルを支える中村(右端/時事通信フォト)

◆小さな成功をみんなで分かち合う

 最大のポイントとも言える、日本代表が掲げる「One Team」をゲーム中に実践していた場面も振り返っておきたい。

 また、アイルランド戦からプレイバックしてみよう。先ほども見た前半34分の好タックルの場面。このあと、相手ボールのスクラムになるのだが、日本が押し勝ち、ペナルティを獲得する。すると、中村はスクラムを組んでいたフォワード陣のところに駆け寄り、一人一人の頭をなでながら、抱き合って喜んでいた。後半24分には、相手ボールに姫野和樹が絡んで、ノットリリースザボールのペナルティを得る。すると、中村は遠くから駆け寄ってきて、フォワード陣一人一人に声を掛けて、ねぎらっていた。

 フォワードが頑張ったプレーに対して、バックスの中村がすばやく駆け寄ってきて、一人一人に声を掛け、褒めたたえているのだ。こうしたシーンは、大会を通じて何度も見られたのだが、こうしたシーン、実は、ただ感情的に喜んでいるのではなく、「One Team」のために中村が意識してやっていることなのだ。

 これは、今大会でもスクラムハーフ(SH)として活躍している流大が、所属先のサントリー(中村も所属)のキャプテンになったときに「小さな成功をみんなで分かち合うことで、チームを一つにしたい」と言って、サントリーでやるようになったものだという。中村はこう語る。

「サントリーで一時期、勝って当たり前、トライを取って当たり前という雰囲気が蔓延したときがありました。大(流)がキャプテンになったとき、その雰囲気を変えるために『小さな成功をみんなで分かち合おう』と話し合ったんです。

 スクラムを押したら、端っこにいるウイング(WTB)も駆け寄って、『ありがとう』と言って、フォワード陣を称える。WTBが独走トライをしても、フォワード陣に『フォワードがいいボールを出してくれたおかげだ』と言って称える。フォワードもWTBのトライに感謝する。それをやるようになってから、チームの雰囲気が、まさに『One Team』という感じで、すごくよくなったんです」

 仲間の「小さな成功」を自分のこととして喜び、同時に仲間に感謝し、認めて、褒めたたえる。褒められた方は頑張り甲斐があったとうれしくなるし、仲間に承認されることで次へのモチベーションも生まれる。こうしてサントリーが「One Team」となっていった手法を、中村は日本代表にも取り入れた。そして、それは今大会の重要な試合の最中にも行われた。最初は意識的にやっていたことも、いまでは当たり前になっている。

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