ラグビーワールドカップ日本代表。ベスト8と敗れたものの、その戦いは日本中を感動の渦に巻き込んだ。まさに「One Team」。その日本代表をOne Teamにした影の立役者について、長年、大学ラグビーを取材し続けてきたスポーツライターの木村俊太氏が、裏話を交えながらレポートする。
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大会前はあまり盛り上がっていないのではとさえ思えたラグビーワールドカップ。ふたを開けてみれば、日本代表の快進撃もあり、大いなる盛り上がりを見せた。
史上初のベスト8進出。その偉業はまさに日本中を巻き込む社会現象と言えた。日本代表は「One Team」となり、そして日本全土が「One Team」となった。筆者がその陰の立役者として挙げたいのが、センター(CTB)として全試合先発出場した中村亮土選手(28)である。
筆者が考える中村のすごかったところは3つ。
(1)格上の相手に対しても、自らのフィジカルの強さを信じて、自信を持って当たっていくことで、チームを鼓舞する力
(2)日本代表が掲げる「One Team」をゲーム中に実践する力
(3)当たり前のことを当たり前にやった上で、状況に応じて、臨機応変に対応していく力
ここまでの日本代表の試合を振り返りつつ、上記の3つについて、具体的な場面を確認しながら、見ていきたい。
まずは(1)。これは、もはや言うまでもないかもしれない。彼の好タックルは枚挙にいとまがないが、例えばアイルランド戦の前半34分、相手を向こう側に倒す強烈なタックルを見舞い、ピンチを救った。後半2分には、ラインアウトを奪われ、ピンチになりかけたところでの好タックル。後半12分には、ハイパントを追いかけ、相手にプレッシャーをかけたことで、相手のノックオンを誘った。後半27分、ハイパントのボールが相手のキープレーヤーの一人ロブ・カーニーに渡るが、ハイパントを競っていた中村が追いかけてタックル。大きなピンチの芽を摘んだ。
格上と思える相手でもひるまず前に出るプレーを見せたのは、もちろん中村だけではない。だが、「ここで止めてほしい」という場面で、ことごとく好タックルを決めている点は、やはり特筆すべきものだと思う。
大きな舞台でその力を発揮できるのは、中村のこれまでの経験と実績、その過程での深い思考のおかげだと考えるが、それについて思い至る出来事が、2つ思い浮かんだので紹介したい。