日本最難関の国立大学といわれる東京大学と京都大学──東西の両雄には、それぞれ学生に対して「健康」をテーマに講義してきた“先生”がいる。彼らが提唱する「最強の健康法」とは。
東京大学には、「筋肉博士」の異名をとる教授がいる。石井直方氏(64)だ。東大理学部入学後にボディビルとウェイトリフティングを始め、1981年と1983年にボディビル・ミスター日本で優勝。1986年、31歳の時にはIFBB世界ボディビル選手権(ミスターユニバース)で7位に入賞した。
生理学が専門で、日本における筋肉研究の第一人者である石井氏の研究テーマは、「筋トレをするとなぜ筋肉は太く、強くなるのか」。現象としては半ば常識だが、科学的な仕組みとしては未解明な部分も多いといい、その研究意欲は衰えることがない。
「人生100年時代、筋肉を維持することはとても重要です。その意味は単に体を動かす機能を維持するということにとどまりません。筋肉には自ら多くのホルモン様の物質を生み出す力があり、それが各臓器に働きかけて病気を予防することが研究からわかってきました。『SPARC』という物質は、大腸がんのリスクを減らす効果が指摘されます。『イリシン』は脳の記憶中枢である海馬を活性化して、認知症を予防する効果が期待されています」(石井氏)
石井氏は61歳の時にステージ4の悪性リンパ腫を患った。そこから生還できたのは「普段から筋肉を鍛えていたことが一因」だという。
「40年以上に及ぶ筋トレで筋力と体力を培ったことが幸いして、抗がん剤治療を乗り越えられました。体力があるからこそ気力も付いてきて、闘病に前向きになれました。筋トレに年齢制限はありません。やり方さえ間違えなければ、還暦を過ぎても全く問題なく取り組むことができます」(石井氏)
そう指摘する石井氏が勧めるのが「東大式スクワット」だ(やり方は図参照)。
「体重が重すぎたら机に手をつき、軽すぎたらリュックを背負うなどして負荷をコントロールしてください。左右それぞれの足を前に出して5~10回を1セットとし2~3セットを週2~3回行なえばOKです」(石井氏)