強い、強すぎる──。ジャパンの快進撃で日本列島が沸騰したラグビーワールドカップ日本大会において、ニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」の躍動を目の当たりにして、思わず感嘆した人は多いはずだ。
キャプテンでナンバーエイトのキアラン・リードが攻守にわたってチームをリードし、今大会のMVP候補でフルバックのボーデン・バレットは目が覚めるようなスピードで相手を圧倒する。試合前に全員で披露するマオリの伝統舞踊「ハカ」の迫力も見どころの一つだ。
予選プールでは強豪の南アフリカを下し、カナダ、ナミビアを寄せ付けず(イタリア戦は台風のため中止)、準々決勝では、予選で日本を苦しめたアイルランドを一蹴した。
オールブラックスは1903年から2019年までのテストマッチ580回で勝率77.41%を誇り、ワールドカップは過去3回優勝。今大会では前人未到の3連覇に向け突き進む。
南太平洋に浮かぶNZは人口およそ475万人、面積が日本の約70%という小国である。羊が2750万頭いるという自然豊かな島国がなぜ、ラグビーの「王国」たりえるのか。
「NZではラグビーは生活の一部です。ほとんどのNZ人は“やる”、“見る”、“教える”などでラグビーにかかわっています」
こう語るのは、NZ出身で愛知県春日井市在住のナターシャ・ハニパリさん(43)。日本の子供たちに英会話を教える「キーウィ英会話スクール」を経営するナターシャさんが生まれ育ったのは、NZ南島南東部にあるオタゴ地方の小さな村だ。人口わずか2000人の小さな村には、芝生のラグビーグラウンドが2面あった。
「毎週土曜にラグビーの試合があって、おじいちゃんから大人、小さな子供まで村のみんなが集まります。クラブハウスではママたちがマッシュポテトやソーセージを振る舞い、子供たちはグラウンドの周りにある森を冒険します。NZはどこでも週末になるとラグビーに人が集まるんです。ほかにあまりやることもないから(笑)」(ナターシャさん)