日本のタクシーは料金体系がはっきりしておりトラブルが少なく安全だと言われている。にもかかわらず、認可を受けずに営業している白タクがなくならない。白タクとは、一般乗用旅客自動車運送事業として届け出がある緑色のナンバープレートをつけたタクシーに対し、普通の乗用車と同じ白いナンバープレートで営業していることから呼ばれる通称だ。白タクという闇営業の実態について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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警視庁交通捜査課は10月7日までに、主に訪日外国人観光客向けに「白タク」行為を行なったとして、都内在住の中国人の男らを逮捕した。中国のアプリを利用し、過去最大規模の違法営業行為を行なっていたと伝えられている。大規模犯罪だと報道されても、普通に生活をしている日本人にとっては、「白タク」と言われてもピンと来ない。しかし、実は身近なところで白タクは存在している。
タクシー事業を行うには、道路運送法に基づき役所への届出、許可が必要である。法人タクシーの運転手であれば、その許可は会社が受けていなければならないし、個人タクシードライバーは、法人タクシー会社で長い間無事故無違反という実績を積まなければ独立は許されない。決して、運転免許証さえあれば「誰でもなれる」仕事、というわけではない。にもかかわらず、つい一年ほど前まで、東京・銀座で白タクのドライバーをしていたという男性に話を聞いた。
「儲かるかどうかって? そりゃ儲かるからやるんですよ」
東京都内在住の自営業・吉田翔太さん(38才・仮名)が白タクを始めたのは、地元の先輩からの紹介がきっかけだった。部下二人だけの、小さな水道工事業者の代表を務めていた吉田さんだったが、副業で収入を増やしたいと考えていた。そこに、夜でもできる「送迎の仕事」で、一晩1万5千から2万円の報酬は”取っ払い”と言われ飛びついたのである。
「仕事がなく、給与の支払いも苦しかった。送迎と言われて最初、水商売の女の子の送迎かと思ったんですけど、白タクでした」
毎週火曜から金曜まで、東京・銀座まで自家用車で出向くと、路上駐車できそうな場所に車を駐め”ボス”からの指示を待つ。ラインや、ショートメールによって行われる指示にしたがって、場所を移動し客を迎えにいく。
「ほとんどの場合は得意先の店のママ、マスターからボスに電話が行き、ボスから僕らに指示が来る。客のほとんどは店のお得意さんです。タクシーみたいに”流し”の客を捕まえることもないわけではないけど、危なっかしいでしょ。警察が一般人のふりをして乗ってくる場合もあるし」