吉本芸人の闇営業問題、山口組分裂による抗争事件などにより、再び「反社会的勢力」の存在に注目が集まっている。新著『教養としてのヤクザ』(溝口敦氏との共著)で暴力団のさまざまな実態を明らかにしたフリーライターの鈴木智彦氏が、25年の取材経験から、彼らの変化について指摘する。
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平成7年夏、ヤクザ専門誌の編集部に入社し、その後フリーになってからは、ひたすら暴力団への直接取材を行なった。現実という大きな山を登るため、裏道を選んだはずなのに、この道が社会のあらゆる場所につながっていて驚かされた。各種の犯罪や同和という社会問題はもちろん、ヤクザは政界、財界、芸能界とも直結していた。飲食、興行、土木建築、人材派遣はおろか、食肉や漁業といった一次産業にさえヤクザというドアからつながった。
取材を始めてから25年……ヤクザはすいぶん変わった。インターネット全盛の今、組織によっては、連絡や通達がLINEで送られてくるし、抗争現場の凄惨な動画や、組事務所内の貴重な映像さえ、ネットに流出するようになった。ある若い衆に「親分のどこに惚れていますか?」と質問したところ「(LINEの)スタンプの使い方がうまいというか、泣けるというか、じーんときます」という答えが返ってきたこともある。また、暴力団排除条例はヤクザを根本から変えてしまった。
銀行口座を持てず、生命保険に入れず、自動車の任意保険にも加入できないのだから、もはやまっとうな社会生活は送れない。就職もできず、起業もできず、あちこちで暴力団という属性が邪魔になる。金を貸した相手からの返済が滞り催促しただけでも、警察に駆け込まれれば暴力団の側が罰せられる。