11月4日まで開催されている「第46回東京モーターショー2019」(東京ビッグサイト)で注目されている展示のひとつが、広く分散する会場と会場を結ぶエリアにあるマイクロモビリティの数々だ。なかでも、モーターを内蔵して自走する電動キックボードは、ドラマ『グランメゾン東京』初回で木村拓哉が乗ってパリ市内を走っていたことでも話題を集めている。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、ビジネスとしても注目を集めるマイクロモビリティの現状と課題、日本での可能性について解説する。
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「マイクロモビリティ」という概念がある。
自転車や電動キックボードなど、簡易な移動手段を指す言葉だ。これらをネットワークシステムと組み合わせることで、新しいビジネスが生まれている。日本では難題もあり、まだスタートできていないものだが、他国では日常の足として定着した上で、新しい問題も引き起こしている。完全に一週遅れだ。
では、そのマイクロモビリティとはなにか? マイクロモビリティの登場で我々の生活はどうなるのかを解説してみたい。
◆スマホの登場で生まれた「マイクロモビリティ」
自転車は便利な乗り物だ。だが、駐輪場所は常に問題になるし、自宅から乗って行ける場所以外では使いづらい。そこで生まれたのが「サイクルシェアリング」である。
過去のサイクルシェアリングといえば、観光地などで周遊目的に提供される「レンタルサイクル」に近いものだったが、現在のサイクルシェアリングは少し違う。自転車にGPSと連携する機器を付け、乗った距離を把握できるようにした上で、利用した分だけ支払う形のビジネスにしたものだ。日本でも、NTTドコモが各地方自治体と連携してサービスを展開している他、いくつかの事業者がいる。
サイクルシェアリングのようなものは、駅と駅の間のちょっとした距離を埋めるのに有利だ。そこで生まれたのが「マイクロモビリティ」という呼び方だ。自分の持ち物ではなく、料金を支払って使う以上、性質的には公共交通機関に近い。だが、電車やバスに比べると規模も距離も小さい。間を埋める小さな存在だからマイクロ……という発想だ。
こうした考え方は、スマートフォンの登場とともに海外で生まれた。
従来のレンタルサイクルは、特定の場所で借りて、その場所へと戻すものだった。レンタル料金を支払う方法も、借りていた時間や乗った距離を算出する方法もなかったので、「数時間周囲を周回する」ためにしか使えなかったのだ。
だが、スマートフォンの登場はこの常識を変えた。スマホのGPSによって近くで自転車を借りられる場所を見つけやすくなるし、降りた場所を把握し、距離や時間に応じて課金しやすくなる。スマホになって「アプリ」が登場したこと、スマホの量産によってGPSなどの部品が安価になり、組み込むのが難しくなくなったことで状況が変化した。電動自転車ならば、GPSなどが使う電力も問題にならない。