“平成の3億円”事件とも称された、博多7億円金塊強奪事件。この事件には様々な謎が残されていた。事件は、2016年7月8日、福岡県・JR博多駅近くのビルの1階で会社役員が警官に声をかけられたことから始まった。会社役員が目を離したすきに、持っていたアタッシュケースが強奪された。じつは警官は偽者で、持ち去られた鞄の中には約7億円相当の金塊が入っていた。
主犯格として逮捕された野口和樹被告(今年1月に福岡地裁で懲役9年の実刑判決、控訴中)は兄・直樹被告(同)とともに名古屋の半グレとして有名な人物だった。高級車を乗り回し、シャンパン三昧の“パリピ”ぶりと、そのド派手な私生活にも多くの注目が集まった。
今年7月19日発売の雑誌『FRIDAY』では、闇営業騒動の渦中にいた雨上がり決死隊・宮迫博之と野口被告の酒席写真が流出。吉本興業を揺るがす大騒動に発展したことは記憶に新しい。
「私がワルなら、警察にはもっとワルがいる」──こう主張するのは、その野口被告本人である。
同事件の謎の一つとして残されたのが、「愛知県警情報漏洩事件」だった。金塊強奪事件の報道に熱心だった西日本新聞(後に一連の報道で新聞協会賞を受賞)は、2017年6月2日に〈博多金塊 捜査情報漏えいか〉との見出しで、次のようなスクープを報じた。
〈福岡市のJR博多駅近くで昨年7月、警察官を装った複数の男に約7億6千万円相当の金塊が盗まれ、福岡、愛知両県警が窃盗容疑などで10人を逮捕した事件で、愛知県警の複数の警察官が逮捕前の容疑者側に捜査情報を漏らしていた疑いがあることが1日、捜査関係者への取材で分かった。福岡県警は今回の捜査で容疑者らの携帯電話を通信傍受しており、その中で警察官との通話を確認した。福岡県警はこのことを愛知県警側に伝えた〉(『西日本新聞』2017年6月2日付)