高校野球が大きな転換点を迎えている。来春の選抜から「球数制限」が導入される予定で、ひとりの大エースに頼るチーム作りではなく、分厚い戦力層を築くことが求められるようになっている。各校が対応を急ぐなか、中学時代から全国の注目を集める選手を多数入学に導いて育成し、高校球界をリードするのが昨年の春夏甲子園王者の大阪桐蔭(大阪)だ。激変する高校球界の実情を綴った新著『投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代』を上梓した柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。
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“王政復古”の予感だ。昨年、根尾昂(中日)や藤原恭大(千葉ロッテ)ら“最強世代”を擁し、春夏連覇を達成しながら、今年は春夏いずれの甲子園も逃していた大阪桐蔭。春夏通算6回(同校としては7回)の甲子園制覇を誇る西谷浩一監督は、この秋の新チーム発足以来、「勝ちに飢えている」と話してきた。
「残念ながら今年は春、夏と甲子園に出られませんでした。その分、(夏に)じっくり練習はできましたし、新チームは勝ちに飢えているというか、甲子園に飢えている。前チームの悔しさが原動力になっている」
秋の大阪大会を圧倒的な戦力で制した大阪桐蔭は、現在、開催中の秋季近畿大会でも準々決勝で難敵・明石商業(兵庫)を下し、11月2日の準決勝では智弁学園(奈良)と対決した。
常にリードを許す展開だったが、8回までを1年生3人のリレーでしのぎ、5-5の同点で迎えた最終回はエース左腕の藤江星河(2年)が登板。流れを呼び込むと9回裏にサヨナラ適時打が飛び出し、競り勝った。
普段は走者一、二塁の場面からでもヒットエンドランのような飛び道具を多用する西谷監督であるが、この日は手堅く送りバントで走者を進めた。
「走者をスコアリングポジションに置くことによって、少しずつ相手投手にプレッシャーを与えられたんじゃないかと思います。夏とは違って秋の大会は、発展途上の中で戦っていく。勝つことが何よりの勉強ですし、勝ったことで、決勝戦という舞台を経験できる。決勝戦はどこが相手でも、しっかり戦って、また勉強の機会にしたい」