息子の堤清二氏(時事通信フォト)

 早稲田大学在学中から実業に手を染めていた康次郎のそれは、息子・清二が言うように、事業に手を出すもののことごとくが失敗だった。船成金を真似た造船業、真珠王・御木本幸吉を真似た真珠の養殖……いずれも手痛い目に遭う。

 だが、康次郎は諦めなかった。飛躍のきっかけをくれたのは早稲田大学創設者にして、政治家の大隈重信だった。大隈に私淑していた堤は大隈が係っていた雑誌「新日本」の経営を任される。結果的に経営は上手く行かなかったものの、その雑誌で取り上げられていた欧米のニューヨーク、ロンドンなどで起きていた新潮流に注目する。それは住宅地が大都市圏から郊外に移っている状況や、避暑地の開発がブームとなっている様子などだった。

 時あたかも大正デモクラシーが生まれ、日本にも小金を持った中産階級が誕生していた。康次郎が目を付けたのは、こうした時代が産み落とした中産階級向けの別荘開発。当時としてはまったく新しいビジネスモデルだった。

「失敗の果てにたどり着いた不動産が、結果として康次郎さんにとっての金鉱脈だった。彼を突き動かす衝動があったんでしょうね。その衝動というか、情念というか……」(清二)

 戦後、康次郎の名をさらに知らしめたのは、皇籍剥奪など経済的に困窮していた旧皇族の屋敷を買い取っては次々と“プリンス”の名前を冠したホテルを全国に展開していったことだった。

「皇室など高貴なものへの徹底したコンプレックスと飽くなき不動産への執着が生んだのが“プリンスホテル”だった」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン