今年の東京モーターショーは、未来のモビリティ社会をイメージさせる体感型の技術展といったコンセプトを強く打ち出し、人気の市販車や発売間近の新型車の展示は控えめだった。そんな中でも、クルマファン注目のニューモデルはいくつか見られたが、自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が印象に残ったと語るのは、三菱自動車の意外な車種だった。
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未来のモビリティエクスポをうたった今回の東京モーターショー。もちろんその体感は来場者にとってメインイベントとなり得るものだが、実際に会場を回ってみると、今すぐ乗れるクルマや近い将来乗れるクルマへの関心は案外高いものがあった。
ホンダが来年2月に発売する予定のコンパクトカー「フィット」は、一度さわってみようという人が列をなすほどであったし、日産ブースでは案の定「フェアレディZ 50th Anniversary」が記念撮影をしようとする人に囲まれていた。スズキの次期「ハスラー」も人気の的だった。
そんな中で、意外な人気を博していたケースとして印象に残ったのは、三菱自動車ブースの「RVR」である。現行の第3世代は2010年デビューと、登場からかなりの年月が経ち、今年8月に大幅なリデザインを受けてイメージを刷新しているが、古いがゆえにほとんど宣伝されておらず、依然としてマイナーモデルだ。
モーターショーで市販車を見るのはある程度クルマへの関心が高い層が中心なのだが、それにもかかわらず初めて見たという来場者がかなりいたようで、展示車周辺では「このクルマ何?」という会話をしょっちゅう耳にした。
RVRが思わぬ目立ち方をしていたのは、単に“珍車”であることばかりが理由ではないだろう。筆者個人の印象としても、今年のリデザインは素晴らしいもので、現行モデル登場後、最も魅力的なRVRという感があった。
フロントマスクは三菱自の新しいアイコンである「ダイナミックシールド」の最新版で、バンパー上に大型のロードランプが装備されているものだが、「デリカD5」、「エクリプスクロス」、「eKクロス」など、同様のデザインが与えられた他のモデルと比較してもヘッドランプとの対比をはじめ、決まりが断然いい。
展示車両は2つあるグレードのうち上のほうの「G」だったが、欧州仕様には昔からあったフェンダーアーチモールが新たに装備されたのも、RVRをより魅力的に見せた。小さな加飾ではあるが、オフロード車的な力感はそれがあるのとないのとでかなりの違いがあり、三菱車らしさが断然増した。
世の中はいま、SUVブーム真っ盛りで、内外のメーカー各社はそれぞれ工夫を凝らしたSUVモデルを多数、市場に投入している。その中にすっかり埋没してしまったRVRだが、このリデザインによるイメチェンで、いきなり大穴たり得る存在となった気がした。なぜならば、このRVR、クルマとしての出来はもともと非常に良いものがあったからである。