「今回のワールドカップは、日本代表がマジですごかったな!」──こんな話題ともなれば、多くの人が思い浮かべるのはラグビーワールドカップ日本大会の日本チームの快進撃のはずだ。
9月20日に開幕したラグビーW杯。同月28日に日本が強豪のアイルランドを撃破すると注目度が一気に高まり、ベスト8をかけた10月13日の日本×スコットランド戦は視聴率39.2%(関東地区の平均)をマークした。フィーバーは過熱の一途をたどって新聞やテレビはラグビー一色になり、10月20日の準々決勝・日本×南アフリカ戦は視聴率41.6%(同)を記録し、今年放送の全番組で堂々の1位となった。
準々決勝敗退後もジャパンの面々はテレビなどに引っ張りだこで、年内の話題を独占しそうな勢いだ。来年開かれる東京五輪の七人制ラグビーに、W杯で大活躍した福岡堅樹(27)、松島幸太朗(26)の“Wフェラーリ”の出場を求める声まで高まっている。
だが、この“にわかラグビーフィーバー”に「ちょっと待ってください」と苦渋に満ちた声を挙げるのは、長年バレーボールを取材してきたスポーツライターだ。
「10月1日に開幕した男子バレーボールのワールドカップで、日本チームは通算8勝3敗で1991年のW杯以来28年ぶりの4位に輝きました。主力の出場を控えた国があるとはいえ、2年前のワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャン)を5戦全敗で終えた日本チームにとっては事前の予想を大きく覆す破竹の勢いだったのに、哀しいことにこの大健闘がほとんどニュースにならなかったんです……」
確かに一足先に開幕した女子バレーの日本チームは通算6勝5敗と苦戦したものの、男子チームは初戦で強豪イタリアにストレート勝ちし波に乗ると、これまでW杯で勝ったことのなかったロシアにも勝利。W杯史上初となる5連勝で迎えたブラジル戦では、今大会を無敗で完全制覇した相手から1セットをもぎ取り本気にさせ、最終戦の相手カナダにもフルセットの末に競り勝った。
長身揃いの“進撃の巨人”たちの中でもひときわ目を引いたのが、23歳のスーパーエース・石川祐希の大爆発だ。
石川は愛知・星城高校在学中に2年連続高校三冠を果たし、世界最高峰プロバレーのイタリア・セリエAでもプレーする日本最高の逸材。素質は誰もが認めながら度重なるケガに悩まされるガラスのエースだったが、肉体改造を施して臨んだ今大会は絶好調だった。
石川の必殺技は、相手コートのネット近くに鋭い角度でボールを叩きつける“超インナースパイク”だ。初戦のイタリア戦では、バックアタックすると見せかけ相手ブロックを引きつけ、空中で体勢を変えて味方にトスする“エアー・スイッチ”を披露。観戦した男子高生が帰り道で「とんでもないものを見た!」と興奮するスーパープレーだった。