親の介護が心配になる世代には、泣きたくなることが山のようにある。そんな時は、実際に“泣く”ことが、張り詰めた心を癒し、心身ともに元気にするという。
とはいえ、ストレスをため込み、人前で涙を見せるのが恥ずかしい現代人は、素直に泣けない場合が多い。
積極的に涙を流すことで健康になる「涙活」を普及すべく、上手に泣くコツを伝授する“なみだ先生”こと感涙療法士の吉田英史さんに聞いた。
◆週1回しっかり泣いて、心身を元気に保つ
吉田さんが涙の効用に気づいたのは、高校の教師をしていた時だ。よく生徒に悩み相談を持ち掛けられたことがきっかけだという。
「相談をしてくる生徒たちの中で、悩みを話すうちに気持ちが高ぶって怒り出す子は、その後、何度も相談に来る。ところが同じように話をしながら泣き出す子は、その後、立ち直って、ほとんどもう来なくなるのです。彼らを見ていて、泣くことが人を癒すのではないかと思ったのです」(吉田さん・以下同)
この経験から、泣く効能を人の生活に生かすべく、ストレス研究の第一人者、東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂氏のもとを訪れたという。
「有田教授によると、人が涙を流すと、戦闘モードである交感神経からリラックスモードの副交感神経にスイッチが切り替わるといいます。困難にぶち当たったり思い悩んだりすると、ストレスがたまり、思考も暴走しがち。ここで思い切り泣くことで、脳がリセットされ、心も思考も穏やかになるのです」
泣いた後は脳がリラックスするため、よく眠れるのだという。不眠に悩む人にも「涙活」はおすすめなのだ。
「1回泣くと、ストレス解消効果はおよそ1週間継続することが検証されています。これは“笑い”よりも効果的ともいわれます。そのため“週1回しっかり泣く”ことを推奨しています」
また、リンパ球や免疫物質が活性化して免疫力もアップ。
「感涙療法士として涙活イベントなどを主催するようになって今年で7年目。私自身も週1回は泣くように心がけたら、かぜをひかなくなりました(笑い)」
◆よりよく泣くコツは、感情移入と共感