近年、空き家問題や相続問題などに悩む人たちが、所有する土地や不動産をタダ同然で売りに出す「ゼロ円不動産」が注目されている。だが、いくらタダ同然だからと所有しても、上手に活用できなければ後々大きな後悔をすることになる。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、ゼロ円不動産の賢い活用法についてレポートする。
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都会に住んでいる人の多くは気づいていないが、日本国内の多くの不動産が資産価値を喪失している。つまり、「タダであげる」といっても、貰ってくれる人さえ見つからないのだ。
中には「維持費の3年分を払っていただければ、所有権をお引き取りします」というビジネスまで登場している。不動産が著しく廃棄費用の高い“粗大ゴミ”と化しているのだ。
ネットを見ると「0円不動産」、「無料譲渡不動産」を扱うサイトがすぐに見つかる。そういうサイトに登録されている不動産は、所有者が「何としても手放したい」という意欲を持っているケースだから、まだマシだ。
『老いる家 崩れる街』(野澤千絵著、講談社現代新書)によると、日本全国で九州の面積に相当する土地の所有者が分からないそうだ。そのほとんどは、相続すべき人間がきちんと登記をしてこなかったのだろう。そういう所有者が無気力化している不動産も含めれば、タダ同然の不動産は恐ろしいばかりに増えている。
私のところに寄せられる相談でも、「実家の住居とその周りに畑や田んぼがあるのですが、どうしたらいいでしょうか?」といった内容が多くなった。
そういった場合、どこにも適用できるような解決の妙策はない。仮に、いくらかでも値が付くのであればすぐに売るべきである。値が付かなくても、タダでもらってくれる人がいれば、惜しみなくあげてしまうことだ。
タダでも処分できなければ、甘んじて保有し続けるしかないのだが、何らかの活用法がないかを考えてみる手はあるだろう。工夫の仕方はいろいろある。詳しくは後ほど述べよう。
ゼロ円不動産を見ていると、「タダなら」といって安易に自分のものにしてしまう方もいる。「別荘にする」とか、「仕事場にする」など目的をもった使い方ができるのなら、とりあえずはOKだ。「釣りをする時の拠点にする」とか、「サーフィンに来た時の休息場所に」というのも、いいかももしれない。
しかし、ここで注意して欲しいのは、そういう使い方をしなくなった時。あるいはできなくなった時はどうなるのかということだ。