自分の子供を恐怖でコントロールしたり、過剰なまでに甘やかせたりする“毒母”。最近ではドラマなどで扱われることも増えている。毒母にもいくつかのタイプがあるが、どれも根本にある原因は同じ。家族問題に詳しい精神科医の斎藤学さんが言う。
「毒母は、自分自身も毒母に育てられた娘です。母自身が自己肯定できていないと、それが子供に連鎖する。子供の自己愛が損傷されるし、膨らまないのですが、それが如実に出る対象が、同性である娘。母の分身であり、共感してくれる存在だとみなされやすいのです」(斎藤さん・以下同)
斎藤さんによれば、赤ちゃんは生後半年ほどで脳神経系が成熟し、母を「自分と別の生き物」とみなすようになる。
「その後、8割くらいの子は、主体としての自分と、他者としてのお母さんという関係を受け入れる。5~6才になると、このペア関係を自分という主体の支えとして考えられるようになる」
「自分と母は別の生き物だ」と自立しようとするわが子の自然な発達を邪魔しようとするのが、毒母の共通点だといえる。
「毒母問題は『あなただけは私をわかってくれてもいいでしょ』という母の思いが娘に向けられて起こります。反抗期のように思春期に突発するものではなく、赤ちゃんの時からの長い歴史を経た“こじれ”から生まれるのです」
つまり毒母は、自身もまた母によって傷つけられたために、心が成熟していない人なのだ。ひとりで苦難を乗り越えられない幼さがあるからこそ、娘に依存するというわけだ。
母娘関係専門カウンセラーの高橋リエさんも「毒親は連鎖する」と前置きする。
「子供は親のケアがなければ生きられないため、親に気に入られようと必死になります。“毒母“の子供たちは、つねに母が怒っていないか顔色をうかがい、不安で緊張し続ける毎日を余儀なくされるのです。小さい子供の場合は、おねしょや爪噛み、不眠(特にお昼寝ができない)などに表れることもあります。
親が怖いと、家で緊張を強いられ、自律神経が乱れて、つねに過緊張状態で生きるようになります。それが『警戒モード』で、不眠や肩こり、食いしばり、対人不安や焦燥感があり、『ねばならない』で行動しがちになります。さらにストレスが強まると、自律神経が『フリーズモード』になり、体が動かなくなったり、うつ、不登校、引きこもりになることもあります」(高橋さん・以下同)