10月22日の即位礼正殿の儀、11月10日の祝賀御列の儀に続き、皇位継承に伴う一世に一度の重要な祭礼「大嘗祭」が11月14日に執り行なわれる。古事記や日本書紀に関する著書が多い歴史作家の島崎晋氏が、古代から続く大嘗祭から、日本神話について考察する。
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来たる11月14日の夕方から夜を徹して大嘗祭が実施される。大嘗祭とは新天皇が即位して最初に行なう収穫祭で、天皇の祭祀のなかでもっとも重視されてきたもの。毎年行なわれる新嘗祭同様、新穀を捧げて神に感謝するとともに翌年の豊穣を祈る。
『古事記』『日本書紀』にも記述があるくらいだから、その歴史は非常に古い。大嘗祭、新嘗祭とも1873年までは旧暦11月の第2卯の日に行なわれ、新暦が採用されて以降、新嘗祭は11月23日に固定化されたが、大嘗祭については大正以降も11月の第2卯の日に実施されている。
天皇に課せられた一番の役割は、五穀豊穣への感謝と祈りにある──おそらくそれが原初の姿で、君主としての役割はそれに付随した二次的なものであったと思われる。
天皇が「五穀豊穣を祈る祭祀の長」であったことの痕跡は、日本神話における天孫降臨から神武天皇の登場に至る地名や神名からもうかがうことができる。神名の表記は『古事記』と『日本書紀』で異なるが、『古事記』がメジャーになったのは江戸時代に本居宣長(1730~1801)が『古事記伝』を世に出して以降なので、ここでは日本全国の神社がそうしているように、『日本書紀』にある漢字表記で統一し、ストーリーについても『日本書紀』に従うとしよう。少々読みにくい感じと早口言葉のような読み方が続くが、その漢字にこそ「天皇の一番の役割」が潜んでいるので、お付き合いいただきたい。