臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、韓国が無断で撮影したとされる日韓首脳対話の写真を分析。
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先週、韓国大統領府が公表した写真が問題になった。写真が撮られたのは11月4日。場所はタイのバンコクで開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)関連の首脳会議、開始前の控室。映っていたのは安倍晋三首相と関係が冷え込んでいる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領、互いの通訳の計4人。写真は日本側に無断で撮影、公表されたものだった。韓国政府は日本側の了解を得ず撮影し、大統領府のホームページで「文大統領が日本の首相と歓談」と発表したのだ。
報道によると、安倍首相は控室で各国首脳と順番に握手していたが、その最後が文大統領だった。待ち構えていた文氏から「ちょっと座って話しましょう」と持ちかけられ、安倍首相は腰掛けて話す流れになったという。
今年に入ってから日韓関係は悪化の一途をたどり、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は失効期限が迫っている。韓国国内の経済情勢も悪化し、前法相の曺国(チョ・グク)氏の辞任問題などで、文政権の支持率は低下するばかりだ。そのため問題の写真は、日韓関係が改善する方向に向かっていることを対外的にアピールするため、韓国側が周到に準備して撮影したのではとも言われている。
韓国政府が狙ったのは両首脳による友好的な「歓談」写真だ。鮮やかな緑と美しい花々を背景に白いソファーセットに座る両首脳。一見すると膝と膝がぶつかるほどの近距離に座り、文字通り、両首脳が“膝を突き合わせて”対話している姿が演出されている。だがその狙いはおそらく外れた。逆に韓国政府はなぜ、この写真を使ったのかと不思議にも思えた。