「あえて申し上げるなら合意なき決定だ」。11月1日、来年の東京五輪のマラソン・競歩が札幌で開催されることが決まり、こう声を震わせたのは東京都の小池百合子知事(67才)。突然の開催地変更に批判が集まる一方、「今年の夏は日中に外出できないほど暑かったから仕方がない」「東京で炎天下の中、走ったら死人が出る」と擁護する声も少なくない。
たしかに、ここ数年の8月は最高気温が35℃を超える日が続き、熱中症による搬送者も増加。2018年には過去最高人数を記録している。
それだけではない。「殺人猛暑」が収まったあとも、豪雨に洪水、台風と自然災害が続発している。気象予報士の森田正光さんが指摘する。
「昔は異常気象といっても30年に1度くらいのスパンでごく短期間、偶発的に発生するものでした。しかし今は10年に1度どころか、下手すれば毎年のように起きています。先日の台風19号も“今世紀最大”といわれましたが、これから先はこのレベルの台風が頻繁に発生することも充分に考えられます」
降りやまない雨や台風が多発する中で暮らす日本人を描いた映画『天気の子』(新海誠監督)が大ヒット中だが、このまま異常気象が続いたら、絵空事ではなくなってしまう。一体今、日本列島に何が起きているのか──。
◆100年で気温が3℃上がる
平均気温の上昇は世界的な現象だ。世界気象機関(WMO)によれば2014年から2019年までの世界の5年平均気温は観測史上最も高くなった。
要因とされるのは、石炭や石油といった化石燃料を燃やした時に発生する二酸化炭素(CO2)だ。CO2の排出量は過去最高を記録し、9月に米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットでは、スウェーデン出身の16才の環境活動家グレタ・トゥンベリさんが「裏切るなら絶対に許さない!」と先進各国に強い口調でCO2削減を迫り、大きな話題となった。
森田さんは「このままでは、地球の温度が100年で3℃ほど上がるかもしれません」と警鐘を鳴らす。
「空気の温度が上がるとそれを海水が吸収して、水温も上がり、相乗効果で地球全体の温度が上がります。今の地球はあらゆるところに熱エネルギーがこもっているイメージです。特に高層ビルが立ち並ぶ東京では地表面に熱が蓄積される『ヒートアイランド現象』も発生し、さらに高い気温が維持されます」
気温の上昇がもたらす大きな災いの1つが台風だ。