2015年、中国共産党政権にとって有害な禁書を中国に持ち込んで利益を得ていたなどとして、中国当局によって拉致された香港の書店の店主、林榮基氏に新たな動きが見られた。2020年5月、台湾の台北市内で、かつて経営していた「銅羅湾書店」をオープンする計画であることが明らかになったのだ。
台湾の独立を目指しているなどとして、中国は民進党政権を強く警戒しているが、台北市内での銅羅湾書店の開店が中台関係を一段と悪化させ、習近平指導部の蔡英文・総統批判が強まることが予想される。
林氏は2015年に拉致されたあと、中国福建省泉州市内の中国の情報機関、国家安全省管理下の施設に閉じ込められ、外出も許されず、3か月間取り調べを受けていた。その後、香港内にある書店の書類などを証拠品として提出することを口実として、香港に戻った際、香港の知人らと記者会見。中国当局によって不当に拉致された事実を暴露し、中国当局の手を逃れ自由の身となった。
しかし、林氏は今年4月に香港政府が逃亡犯引き渡し条例の立法化手続きを始めたことで、再び中国当局に身柄を拘束されることを警戒し、香港から台湾に避難。台湾には政治亡命者を受け入れる法律がないため、観光ビザで台湾に入り、以後3か月ごとにビザを更新しているが、台湾当局は林氏が商用で台湾に滞在可能との特例措置を認めたため、禁書を扱う書店を台湾で再開することになったという。
林氏が新たに書店を開くのは、文化発信地として若者に人気がある台北市万華区にある商業地区で、「台北の原宿」などと呼ばれる西門町。
林氏がこのようなファッションやサブカルチャーの発信源ともいえる西門町に店を構えようと思ったのは、「多くの若者や観光客が集う場所であり、中国の実態を伝えるには好立地だからだ」と話しているという。