何か事件が起きると、それに関連した真実なのかどうかよく分からない情報がSNSをかけめぐる。デマであることも多いが、情報を拡散する人たちは、実はいろいろとピントがずれている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、余計な義憤を持ってしまう実名のSNSユーザーの行為がいかにバカバカしいかについて考えた。
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8月に茨城県の常磐自動車道で発生した「あおり運転殴打事件」に関連し、無関係な女性のことを宮崎文夫容疑者と一緒にいた「ガラケー女」だというデマを拡散した愛知県豊田市の市議・原田隆司氏が辞職した。原田氏は心からの謝罪を述べているが、実に迂闊なお人だ。
今回女性がガラケー女とされた理由は、宮崎容疑者が彼女のインスタグラムをフォローしていたことと、「ガラケー女」同様帽子とサングラス姿の写真を投稿していたことだけである。「だけ」なのだ。これだけで多くの人が「こいつがガラケー女だ! けしからん!」とばかりに拡散。原田氏も「早く逮捕されるよう拡散お願いします」とまで書いた。
女性は原田氏に100万円の損害賠償を求める通知書を送ったが、その後同氏から届いた手紙には謝罪はあったものの、賠償金への言及はなかった。督促にも応じず、原田氏が「なんで自分だけ」と話しているのを知り、提訴に至ったという。
この「なんで自分だけ」という発言だが、「そりゃそうだろうよ」というのが率直な感想だ。だってあなた身元が割れていて、しかもしっかりとした立場の方でしょ?
ネットの誹謗中傷やデマ拡散が厄介なのは、書き込み者の特定がしづらい点にある。以前、横浜DeNAの井納翔一投手が「嫁がブス」と匿名掲示板に書かれ、書き込んだ女性を特定し、約200万円の慰謝料と訴訟費用の負担を求めた。この時の訴訟費用は77万円だったが、これには弁護士による掲示板運営者への開示請求等の費用も含まれている。