現在の安倍政権は“反東大内閣”と呼ばれることもある。過去の自民党政権に比べて、東大出身の大臣が極端に少ないからだ。小渕内閣(7人)や第1次小泉内閣(6人)など、平均6~7人の東大出身者を擁してきた歴代自民党政権において、安倍内閣も第1次政権では7人の東大出身者を揃えた。ところが再登板後の第2次政権では発足時に4人(+東大大学院1人)、今回の改造内閣ではついに3人にまで減少している。
政権中枢の政治家を見ても、安倍晋三・首相は小学校からエスカレーターで成蹊大を卒業、麻生太郎・副総理は初等科から大学まで学習院だ。対照的に菅義偉・官房長官は高校卒業後に段ボール工場で2年間働いた後、国立大学の受験に落ちて法政大学に入学している。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「安倍家は祖父の岸信介氏も父の晋太郎さんも東大法学部出身。安倍さんは高校時代に晋太郎さんから“東大に行け”と分厚い辞書で頭を叩かれながら勉強を強いられ、それに反発した。そうしたこともあって、東大出身者とエリート官僚が嫌い。麻生副総理や菅官房長官も東大ではなく、政権として東大出身者主導の政治に対するルサンチマンがあると思う。内閣人事局をつくって官邸が官僚トップの人事権を握り、非東大の政治家が東大出身の官僚の上に立つという仕組みをつくったのもその現われでしょう」
“反東大”政権が力を入れたのが「学制改革」だ。
「偏差値中心の単線型の教育を改め、複線化した、多様な価値を求めていくことができる学校制度に根本的に改めていく」
安倍首相はそう表明し、第2次安倍内閣が発足すると、菅官房長官や当時の下村博文・文科相をメンバーに教育再生実行会議を設置して小学校の英語教育義務化や大学受験改革など「世界トップレベルの学力」をめざす改革に着手した。改革レールを敷いた下村元文科相はこう語っていた。