放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、落語家が書いた本で過ごす読書の秋についてお送りする。
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この連載頁の担当者と佐野文二郎クン等とで作った『面白い人のことばっかり!』(小学館)が出版され絶賛キャンペーン中だと言うのに、あわただしくこの一週間で4冊もの落語家が書いた本が贈られて来た。
噺家が出した本で過去には名著も数々あって「いだてん」でおなじみの古今亭志ん生には『なめくじ艦隊』『びんぼう自慢』がある。ライバルと言われた桂文楽には『あばらかべっそん』、三遊亭圓生には『寄席育ち』、そして我々団塊の世代の高校生時代、バイブルともいわれた立川談志の『現代落語論』。この本は今でも売れている。最近のものでは談志の弟子、談春が書いた『赤めだか』。これはテレビドラマにもなった(談志の役がビートたけし、私の役がなんとも情けないラサール石井だった)。色々なことが蘇る。
そこで私のところへ届いた本たちの話。まずは冒険の旅を続ける落語家・林家彦いちが出した本。この男、あれっ最近見ないなと思うと、たいてい作家の夢枕獏さん等と外国の辺境を命がけで歩いている。創作能力も抜群で、これは久米宏のラジオ番組で発表した数百という小噺にホワホワと毛の生えたようなネタ63本を選びぬいたもの。タイトルは『瞠目笑(どうもくしょう)』。少し分かりづらいが、大昔に『醒睡笑(せいすいしょう)』という、安楽庵策伝という落語の元祖みたいな人が書いたものがあるわけ。それのパロディって……分かりづらいっつーの。