21世紀は災害の世紀という言い方をする人もいるほど、台風や豪雨、地震や津波などの巨大災害、複合災害が続いている。想定外の事態が次々と発生したため被害が大きくなったというが、経営コンサルタントの大前研一氏は、歴史の教訓に学び、大水害に備えた「洪水プレイン」が必要だと訴える。この「洪水プレイン」とは一体何か。大前氏が解説する。
* * *
台風19号と21号に伴う豪雨で多数の川が決壊・氾濫し、甚大な被害が出た。国土交通省によると、台風19号では宮城、福島、長野、茨城など7県の71河川・140か所が決壊した。台風21号では千葉や福島など5県で27河川が氾濫したと報じられた。
今回は百年に一度の集中豪雨だったから想定外の事態が多々起きて被害が拡大したという。だが、歴史の教訓に学んでいればかなりの被害は防げたはずであり、それができなかったのは“行政の怠慢”だと思う。
具体的な対策としては、豪雨や高潮による浸水想定区域をシミュレーションした「ハザードマップ」に基づき、水害リスクが高い地域では安全な場所に住民を移住させるべきである。私は2011年に「3.11」(東日本大震災)が起きた時、8日後の3月19日に【1】津波で被災した地域を「津波プレイン(平原)」に指定して土地を買い上げ、人は住まわせない【2】住宅地は安全な高台に移す―という復興ビジョンを提案した。それと同じように、台風などによる水害リスクが高い地域は「洪水プレイン」に指定し、どうしてもそこに住みたいという人には自己責任で住んでもらうのだ。
これはオーストラリアなどでは当たり前のコンセプトで、水害リスクが高いとわかっているエリアの土地は行政が売買を制限する。たとえば百年に一度、津波や洪水で大きな浸水被害が出ている土地の場合、そのことを売り手が売買契約書に明記し、買い手もそれを了承してサインしなければ契約は成立しないのだ。
そんな危ない物件が売れるのかと思うかもしれないが、そういう土地は普通の土地より格段に安いから買い手がつくのである。そして「洪水プレイン」に土地を買った人は、たいがい高さ2mほどのマウンド(盛り土)を作り、その上に家を建てている。