いよいよ開催まで250日を切った東京五輪・パラリンピック。来年のビッグイベントに向け、東京都が都内の中高生から6000人のボランティアを募集する計画を立てたと報じられた。事前に人数が割り当てられて半ば強制的に参加を求められる学校もあり、専門家からは「ボランティアで大切なのは自発性」との異論もあると指摘されている。
東京五輪・パラリンピックでは、競技会場で案内などを行う「大会ボランティア」と、駅や空港で観光案内などを行う「都市ボランティア」あわせて約11万人の活動が見込まれるが、「炎天下に無償で働かせるなんてブラック・ボランティアじゃないか」との批判もあり、ボランティアはどうあるべきかが議論されている。
参考にしたいのは、11月2日に幕を閉じたラグビーワールドカップだ。日本代表の快進撃で「にわかファン」が急増した同大会では、スタジアム内、会場への道中、最寄り駅などにおそろいのユニフォームを着たボランティアが陣取り、満面の笑顔で観客を迎えた。
「こうした人々をスポーツボランティアと呼びます」と語るのは、文教大学人間科学部の二宮雅也准教授だ。
「スポーツを『する』『見る』だけでなく、『支える』人々を総称してスポーツボランティアと呼びます。地域スポーツの指導や少年野球の審判といった実践的な活動から、今回のW杯のようなイベントの運営をサポートする活動まで、その内容は多岐にわたります。運営を支えるスポーツボランティアは、2007年の東京マラソンを機に注目されるようになりました」(二宮准教授)
ラグビーW杯2019組織委員会によると、今大会は12会場で合計およそ1万3000人のボランティアが参加した。年齢層は10代~80代と幅広く、単純計算で1会場あたり1000人強のボランティアがいたことになる。
東京、横浜、大阪、熊谷で計13試合をスタジアム観戦した筆者がとりわけ強い印象を受けたのが、すべてのボランティアがみせた「屈託のない笑顔」だ。彼ら、彼女らは常に柔和な表情でスタジアムへの道順を示し、困っている人に声をかけ、観客からの写真撮影の要請に快く応じ、道行く一行に「ようこそ!」と挨拶した。